円安を追い風に、2023年11月から24年2月末の村内観光客数が前年比で123%と、過去20年で最高を記録した長野県白馬村。冬季にはウィンタースポーツを楽しむ外国人が訪れる観光地だが、年間を通じた集客に向け模索が続いている。
ゴールデンウィーク(GW)を過ぎた5月中旬、JR白馬駅は閑散としていた。「GWが終わると、スキー場のゴンドラが止まり、冬から営業を続けてきた飲食店も一休み。今が一番、人が少ない時期ですよ」。宿泊したペンションの主人が教えてくれた。
そんなグリーンシーズン(夏季)でも強い誘客力を持つのが、白馬岩岳マウンテンリゾートだ。23年度の来場者は夏季22.2万人と、冬季14.7万人より多い。立役者となったのが、運営会社の「岩岳リゾート」社長を23年10月まで務め、今は新たなリゾート施設を手がける和田寛(ゆたか)さん(47)だ。
元官僚で、2014年に白馬村に移住しスキー場運営会社に入社。北アルプスを望む大型ブランコやカフェ併設のテラスを企画し、その様子がSNSなどで広がったことで、国外客も徐々に増えてきたという。「国内のスキー需要は年々小さくなり、冬頼みでは厳しい。日本の古き良き街並みや自然が随所にあって、外国人にもアピールできる。岩岳以外にも魅力的な宿泊施設や食事などコンテンツを増やし、白馬に泊まる流れを作りたい」と話す。
懸念もある。北海道のニセコ地域では、外資の流入が過熱。物価や地価が高騰し地元住民の生活に支障をきたしている。白馬村でも外資の高級リゾートホテル建設を目指した用地の取得や、首都圏のディベロッパーなどによるホテルコンドミニアムの建設など、インバウンドや高所得者層を狙った開発が進む。
白馬村の丸山俊郎村長(49)は「外資規制を強化し、事業者を積極的にコントロールすることは一地方自治体には難しいが、村としてはオールシーズン滞在型のリゾートを目指したい。通年で誘客して地元雇用の安定につながれば」と未来像を描く。
村は23年、国連世界観光機関が持続可能な観光地づくりに取り組む地域を認定する「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に選ばれた。26年度に新しく策定する観光地経営計画では、認定された地域価値を生かし、持続可能な観光ガイドラインの指標に準拠した内容にしていく方針だ。(写真・文 小林一茂)
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