京都市下京区の繁華街から少し離れた通りに、日本では珍しいラオス料理の専門店「YuLaLa」がある。店名は、現地語で「何もせずにぼーっとする」という意味。ゆったりとした時間が流れる隠れ家のような場所で食べる家庭料理はどこか懐かしく、素朴な味わいだ。(共同通信=米田亮太)
牛肉とナスの煮物「オ・ラーム・サイ・シーングア」、魚の切り身をバナナの葉で包んで蒸した「モック・パー」…。机の上に並べられた代表的な料理を、主食のもち米と一緒に口に運ぶと、フレッシュハーブが爽やかに香ると同時に、心の底からほっとする優しさを感じる。
味の中心は、淡水魚を米ぬかと塩で発酵させて作る伝統的な調味料「パーデーク」。琵琶湖の魚を使った自家製で、ディルなどのハーブも畑で育てたものだ。「隣国のタイ料理とは違い、調理に油や砂糖をほとんど使わず、辛さも穏やか。素材を生かした素朴な味わいが特徴です」と説明してくれたのは岡田尚也さん(47)。妻の綾さん(48)とこの店を始めて、来年で10年になる。
岡田さんが初めて東南アジアの内陸国ラオスを訪れたのは1999年。大学院生として焼き畑農業の調査に訪れた北部の村で食べた料理の味に衝撃を受け、自然の中でたくましく生きる人々にも魅了された。
「研究は向いていないと断念したけど、この人たちの社会の中で暮らしてみたいと思った」。日本で調理師免許を取得し、夫婦で首都ビエンチャンに戻ってレストランを開き、10年間暮らした。
2015年に帰国し、学んできたラオス料理の専門店を地元の京都で開業。今年3月には、夢だったというレシピ本を仲間たちと共著で出版した。「大事にしているのは、私たち夫婦が現地で実際に食べて抱いた感動や驚きを追体験してもらえるような料理を作ること」と岡田さんは語る。
「ほとんど何も知らずにふらっと訪れた人が、ここの料理を食べ、少しでもラオスという国に興味を持ってくれたら、それが一番うれしいです」
ラオス料理のもち米 ラオスでもち米は主食とされるほか、加工して料理に加えたり、酒にしたりと多様な用途で使用される。生のもち米を水に浸してペースト状にした「カオブア」はスープのとろみ付けに用いられ、もち米をいって粉末にした「カオクア」は料理に香ばしさを加える調味料になる。ココナツミルクで炊いてスイーツにもする。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。