「映画で描かれている時代から79年経った今も、終わらない核の影響に苦しみ続けている人々が数多く存在します」
6月3日配信の記事「祖父が参加したマンハッタン計画 映画に描かれなかった医師の警告」に、核廃絶をめざす若者らの団体「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)共同代表の田中美穂さんは、こうコメントした。
米アカデミー賞7冠の映画「オッペンハイマー」は何を描き、何を描かなかったのか。原爆の開発「マンハッタン計画」を指揮した科学者ロバート・オッペンハイマーにゆかりのある米国人らに聞いたインタビューシリーズ「Dear オッペンハイマー」(全6回)。初回の記事では、映画から「完全に除外された」エピソードがあることを伝えた。
田中さんは、2回見たという映画の印象を「核兵器の議論がいかに男性のパワーゲームの中で展開され、人間や自然環境への視点がすっぽり抜け落ちてしまっていたかを如実に表現している」とコメント。故に、今回の記事のように映画の外から、取りこぼされた声を拾い集めていくことが重要との考えを示した。
その上で、被爆地の広島・長崎では、1945年の原爆投下による苦しみが今も続いていることに言及。被爆したせいで子や孫が病気をしてしまうのではないかという恐怖に、さいなまれ続ける人も多いことに触れた。また、米国内やマーシャル諸島などでの核実験でも同じ状況を生み出していることを指摘した。
そして、開発の段階で人間と自然環境をむしばみ、「勢い」に乗ると誰も止められず、万一使用されても誰も責任を取ることができないものが「核兵器」だとし、今も世界には推計で1万2千発あまりの核弾頭が存在していることを踏まえ、次のようにコメントを締めくくった。
「この世界を変えるためには、取りこぼされている視点に私たちが気づき、歴史から学び、被害を受けた人々とともに行動することができるかにかかっているのではないでしょうか」
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