仙台市で唯一の海水浴場の、若林区荒浜地区にある「深沼海水浴場」は、震災の津波で大きな被害を受け、災害危険区域に指定されたため、泳げなくなっていましたが、市は震災のあと初めて、7月15日の海の日から8月18日まで海水浴場を設けて泳げるようにします。
これにあわせて、市がまとめた津波などに備えた避難計画の概要が、市の関係者への取材でわかりました。
それによりますと、海水浴場からいずれもおよそ800メートル離れた、震災遺構になっている「荒浜小学校」と、「避難の丘」と呼ばれる高台に避難するとしています。
この「避難の丘」は、県がおととし公表した最大クラスの津波の浸水想定で高さが足りなくなったため、かさ上げ工事を行っていますが、海水浴場のオープンまでに避難に必要な高さを確保するため一部の工事を前倒しするということです。
また、仙台市は、海水浴場には一日当たりおよそ2000人が訪れると見込んでいて、安全を確保するため、一度に入場する人の数を800人に制限するとしています
周辺の新施設 海水浴場のオープンに期待
海水浴場がある仙台市若林区の沿岸は、一部が「災害危険区域」に指定され、人が住めなくなっていますが、周辺には新たな施設が設けられていて、海水浴場のオープンが活性化を後押しすると期待感が出ています。
仙台市は、「災害危険区域」に指定されて住民が移転したあとの土地を買い取り、企業などに貸し出していて、震災から13年余りがたつ中、新たな施設が整備されて人々が集まるようになっています。
このうち、おととし若林区藤塚地区にオープンした「アクアイグニス仙台」は、レストランや温泉がある複合施設です。
地元の野菜やお酒を多く取りそろえるマルシェには、地元の人だけでなく観光客も多く訪れていて、平日でも活気を見せています。
マルシェを担当する伊藤朗さんは「少しずつにぎわいが戻ってきていると感じています。この夏は、海水浴に行ったあとに温泉に入ったり買い物をしたりするため立ち寄ってくれるのではと、とても期待しています」と話していました。
また、去年、荒浜地区にオープンした「深沼うみのひろば」では、VR=バーチャル・リアリティーを使って津波の被害を体験してもらうなど震災学習のイベントを行っていて、全国から修学旅行生などが訪れているということです。
この施設では、海水浴場のオープンにあわせて、ふだんは一般に開放していないスペースを使ってカフェを設け、海水浴客に利用してもらう計画だということです。
施設を運営する不動産会社の橋本麻弥さんは「市民にとって深沼海岸は思い入れがあると思うので、楽しく安全に過ごしてもらいたいです。迅速に避難することが大事だと思うので、私たちも意識していきます」と話していました。
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