札幌市が高齢者に食事を届けて安否の確認を行う事業では、今月上旬、委託先から業務を請け負っていた配達業者が中央区の80代の女性の自宅を訪れた際に応答などがなかったにもかかわらず、2日続けて安否確認を怠り、その後、家の中で倒れていた女性の死亡が確認されました。
これについて、札幌市の秋元市長は20日の記者会見で「あってはならないことだ。契約した業務内容がきちんと履行されていないため何らかの処分を検討していかないといけない」と述べ、今後、委託先の事業者の処分を検討する考えを明らかにしました。
また、札幌市は業務を委託しているこの業者を含めた11の事業者に対し、配食だけでなく見守りサービスの事業を徹底し、異変があったときの対応方法を現場に周知するほか、問題が生じた場合はすみやかに市に報告するよう求めたということです。
食事を届け安否確認行うサービス 札幌市で2300人余が利用
1人暮らしの高齢者が急増する中、札幌市は買い物や調理が難しい人を対象に食事を届けて安否の確認を行うサービスを提供しています。
食事は1日1回、500円で日曜・祝日をのぞく週6日、自宅に夕食を届けるとともに、お年寄りの様子を確認して気になることや変わったことがあった場合は家族や警察などの関係機関に連絡することにしています。
札幌市は11の事業者と委託契約を結んでいて、ことし3月時点のサービスの利用者は2300人余りにのぼっています。
別の配達会社 注意呼びかけ
問題のあった配達業者とは別の、札幌市西区にある弁当を配達する会社では、10年以上にわたり市の事業の委託を受けていて、600人余りが利用しているということです。
今回の問題を受けてこの会社では、20日、「異変を感じたら必ずその場で会社に連絡をください。明らかに緊急性のある場合はその場で警察や消防に通報してください」などという配達員向けの周知文を作成し、改めて注意を呼びかけました。
20日は昼すぎから食事を届けはじめ、配達員の女性が利用者の住むマンションの部屋の玄関に入り「お元気ですか」などと声をかけながら夕食の弁当を手渡していました。
弁当を受け取った70代の女性は「配達員の方が天気の話をしてくれるなどおしゃべりができてうれしくなります。安否確認にもなりますし、直接話せる人がいるのは安心感があります」と話していました。
配達員の女性は「実際に利用者が亡くなっていたのを見つけたことがあったので、顔を見て話を聞けると私も安心します。弁当を届けるだけではなく、ちょっとした雑談をして体調が元気かどうかも気にかけています」と話していました。
会社によりますと弁当を届ける際にインターホンで呼びかけても応答がなく、開いていた窓から声をかけたところ、部屋の中から動けなくなった利用者の声が聞こえて救急車を呼んだケースもあったということです。
株式会社「日信」の東範英専務取締役は「同じ配食事業者として高齢者が亡くなる事案が発生したことは悔しいです。食事の配達だけではなく、人の命を救う使命を持った仕事であり、利用者が中で倒れているかもしれないという感覚を持って安否確認を徹底していきたい」と話していました。
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