観光庁の新型コロナウイルス対策の補助金制度を悪用し、約2千万円をだまし取ったとして、岩手県警は20日、同県雫石町の老舗温泉旅館「長栄館」(営業終了)の元社長、照井貴博(37)=住所不定、詐欺罪で公判中=と無職、佐藤真澄(38)=神戸市長田区=の両容疑者を詐欺の疑いで逮捕し、発表した。県警は2人の認否を明らかにしていない。

 捜査2課によると、2人は観光庁所管の「既存観光拠点再生・高付加価値化推進事業」の補助金をだまし取ろうと計画。佐藤容疑者が役員を務めていた自動車部品販売会社が長栄館の宴会場の改修工事を請け負ったように装い、2021年7月下旬から22年3月下旬にかけ、事業を受託する大手広告会社に虚偽の交付申請書や実績報告書などを送り、長栄館名義の預金口座に約2千万円を振り込ませた疑いがある。

 この事業は、コロナ禍の影響で危機的状況にある宿泊施設や観光施設を再生し、地域の魅力や収益力を高めるために創設された。大規模改修や景観の改善につながる廃屋の撤去などを支援するとしている。

 長栄館はこの制度を利用して申請を複数回行い、計1億数千万円の補助金を受けていた。県警は別の交付についても不正がなかったかどうか実態を詳しく調べている。

 照井容疑者がコロナ対策の補助金の詐取事件で逮捕されるのは3回目。4月に開かれた別の詐欺事件の初公判では起訴内容を認めた。(小幡淳一)

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