職場の問い合わせ用メールアドレスに、同僚を傷つけるメールを送ったら、名誉毀損(きそん)罪は成立するか――。この点が争われた刑事裁判で、大阪高裁(石川恭司裁判長)は20日、罪の成立に必要な「公然性(不特定多数が認識できる状態か)」の審理が不十分だと判断し、審理を一審・大阪地裁に差し戻す判決を言い渡した。

 同罪に問われたのは大阪府内の農業協同組合に勤めていた男性被告(43)。一審判決は、被告が2022年5月、農協の採用案内の問い合わせメールアドレスに同僚女性の見た目や営業活動について中傷するメールを送ったと指摘。被告が執行猶予期間中だったことを踏まえ、懲役1年6カ月の実刑とした。

 この日の高裁判決は、「公然と事実を摘示し、名誉を毀損」という同罪の構成要件を検討した。メールの内容そのものは名誉毀損に当たるとしつつ、閲覧したのは問い合わせの担当者や被害者ら7人だけだったと指摘。「特定少数のみが閲覧できた疑いが残る」として、ほかに閲覧しうる人がいたのかなど公然性についての審理を尽くすべきだと結論づけた。(山本逸生)

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