福岡県うきは市で2021年、叔父を車でひき殺して保険金をだまし取ったとして、殺人や詐欺などの罪に問われた会社役員の松成英一郎被告(57)=大分県日田市=の裁判員裁判が19日、福岡地裁(鈴嶋晋一裁判長)であった。検察側は無期懲役を求刑し、弁護側は無罪を訴えて結審した。判決は28日に言い渡される。

 起訴状によると、松成被告は21年4月1日夜、うきは市で、叔父の西村一敏さん(当時64)=日田市=を軽乗用車で複数回ひくなどして殺害。後退中にタイヤに巻き込まれて事故死したと偽り、保険会社から死亡保険金約1497万円をだまし取るなどしたとされる。

 検察側は論告で、西村さんの衣服や遺体の損傷状況から別々の方向に少なくとも3回ひかれており、意図的な犯行と指摘。西村さんが被告と電話した後に現場へ向かったことや被告が保険金を受け取ったことを挙げ、被告が犯人だと主張した。その上で「保険代理店を営む過程で得た知識を悪用し人の命を金に換える、残忍で冷酷な犯行だ」と訴えた。

 一方、弁護側は最終弁論で、通行車のドライブレコーダーの映像の鑑定結果から、西村さんは被告が殺害したとされる時刻以降も生存していたと主張。不調だった車が後退して事故死した可能性は否定できず、会社の経営が順調だった被告に保険金殺人をする動機もない、などと訴えた。(上月英興)

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