カンボジアが拠点となったSNSを使った特殊詐欺事件で、詐欺罪に問われた大阪市淀川区、無職伊藤宏樹被告(49)の論告求刑公判が18日、佐賀地裁(岡崎忠之裁判長)であり、検察側は懲役6年を求刑した。弁護側は「被害者らを欺いて金員を詐取しようとする故意はなかった」として無罪を主張した。判決は7月25日に言い渡される。

 検察側は論告で、カンボジアのカジノホテルに集まった多数の中国人が、日本人になりすまし、事前に作成した日本語台本に沿って、架空のFX取引で4人の被害者から計4030万円を詐取した組織ぐるみの詐欺事件とした。

 被害額が計4030万円と高額で、弁償されておらず、伊藤被告が被害者をだます台本や日本語の修正、架空の投資家になりすました録音作業も担ったなどと指摘し、「厳罰は避けられない」とした。

 弁護側は、伊藤被告が米国の大学や台湾の大学院に留学経験があり、英語や中国語に堪能なこと、双極性障害があり、カンボジアに渡る前は精神障害者2級の年金と夜間アルバイトで生活していたことをあげた。

 その上で、伊藤被告がカンボジア在住の知人から通訳を探していると聞き、「投資を扱う会社で詐欺とは、全く考えていなかった。作業は中国人上司から指示された業務命令であり、雇用契約により履行したに過ぎない」とした。

 また、弁護側は、無罪主張をした上で、仮にそうでない場合、①伊藤被告の作業は詐欺事件全体からみて歯車の小さな一つで「幇助犯」に過ぎず、1年以上身柄を拘束されている②前科前歴はない③双極性障害という持病を有しているなどの情状がある――として、執行猶予付き判決を求めた。

 起訴状などによると、伊藤被告は共犯者らと共謀し、投資顧問になりすまして外国為替証拠金取引(FX)の運用名目で金銭をだまし取ろうと考え、昨年4~5月、県内の40代男性や兵庫県の60代男性らに現金計4030万円を被告らが管理する口座に入金させ、だまし取ったとされる。(三ツ木勝巳)

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