1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)の裁判をやり直す再審の第13回公判が17日、静岡地裁であった。弁護側は、犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕のDNA型について、「袴田さんとは異なる」とした専門家の鑑定は「高い信頼性がある」と主張した。

 再審請求審では、弁護側が推薦した本田克也・筑波大教授の鑑定で、衣類のうち、シャツにあった血痕から「袴田さんとは別人のDNA型が検出された」とする結果が出た。2014年に一度再審開始決定を出した静岡地裁は信用性を認めたが、18年の東京高裁は「鑑定手法に深刻な疑問がある」と信用性を否定した。最高裁も「証拠価値があるとは言えない」と判断。最終的に再審開始を決めた昨年の高裁決定は、血痕の「色の変化」についての実験結果という別の証拠を根拠とした。

 この日の公判で弁護側は、鑑定には標準的で高性能なキットが使われ、信頼性は担保されていると主張。鑑定結果は「論理則や客観的なデータに支えられている」として、鑑定手法などへの批判は「鑑定の主要な結論を左右するものではない」と訴えた。

 検察側は、衣類の保存状況などからDNAの劣化が進み「鑑定可能なDNAが失われていた」などと反論。捜査や公判の過程で第三者のDNAが付着した可能性があるとも主張した。(金子和史)

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