鹿児島県垂水市で見つかった大規模な地下壕(ごう)について、市教育委員会は太平洋戦争中につくられた旧日本軍の特殊地下壕で、魚雷整備の施設だったとする調査結果を10日、明らかにした。長さ約100メートルの直線の坑道が10本あり、総延長は約1・75キロ。「ひとまとまりの地下壕としては九州最大級」としていて、戦時中を物語る重要な戦争遺跡と位置づけている。

 壕は垂水市浜平の鹿児島湾に面した高さ40メートルのシラス台地下にある「浜平特殊地下壕」。2022年4月、崖崩れを修復する治山工事の測量中に見つかり、調査してきた。

 市教委によると、素掘りの真っすぐな坑道(縦坑)が11本ある。このうち10本の長さは100メートル。もう1本は50メートルほどで途中まで掘られたとみられる。11本は奥で横坑でつながっており、その長さは約170メートルだった。内部はトンネルのようになっていて、高さ、幅とも最大4メートルほど。さらに複数の横坑でつながれ、平面図にするとはしご状になっている。総面積は5138平方メートル。

 戦時中、近くには魚雷の整備・教育を担った旧日本軍の垂水海軍航空隊の基地があった。市教委は「民間の防空壕とは異なり、非常に規格性の強い構造」といったことや昔の史料から、1945年3月ごろにつくられた垂水海軍航空隊の施設だと結論づけた。

 魚雷に関連する施設だったことを示す明確な残存物はなかったが、三つの貯水槽が確認された。近くにディーゼル発電機を使った痕跡があったことから、貯水槽は燃料貯蔵庫だった可能性があるという。地下壕に電気を行き渡らせるための遺物も各所にあった。

 また、壕を支える木枠を設置したとみられる「支保工」の跡と思われるかぎ形のくぼみもあった。重い魚雷をつり下げる用途としても使われたとみている。これら構造物群は北側に集中的に見られ、「北側エリアが先につくられ、南側の完成を待たずして終戦となった可能性がある」としている。

 浜平地下壕の規模は、全国的にも大規模とされる全長約1.6キロの館山海軍航空隊赤山地下壕跡(千葉県館山市)をしのぐといい、担当者は「全国的にも大規模で貴重な戦跡。100メートルの直線の坑道が複数あるのもシラスの地質だからできたもので国内でも珍しいのではないか」と話した。

 一帯は頑丈な岩質のシラス台地のため保存状態は良好だという。ただ、崖崩れを防ぐ治山工事が始まっており、中に入ることはできない。市教委は当面は3D映像などで内部を公開したいとしている。(仙崎信一)

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