大阪地検特捜部が捜査した業務上横領事件で無罪が確定した不動産会社の元社長が7億7千万円の国家賠償を求めた訴訟で、捜査を担った検事らの証人尋問が11日午前、大阪地裁(小田真治裁判長)で始まった。当時の特捜部の捜査が適正だったのか、改めて問われそうだ。

原告はプレサンスコーポレーション(大阪市)元社長の山岸忍氏(61)。この日は関係者を取り調べた当時の録画映像を再生。その後、山岸氏の元部下=業務上横領罪で有罪確定=を取り調べた田渕大輔・東京高検検事(52)が証人尋問のため出廷した。

捜査を担当した検事の証人尋問は、この日を含めて計3回予定されており、計4人が出廷する。

国側は大阪地検特捜部の検事として捜査を担当した4人の陳述書を大阪地裁に提出。原告側代理人によると、学校法人元理事の取り調べを担当した末沢岳志・東京国税不服審判所国税審判官(46)は主任検事だった蜂須賀三紀雄・神戸地検刑事部長(51)に「(山岸氏の)逮捕は待った方がいいと思う」と進言した。

だが蜂須賀氏は自身の陳述書の中で「覚えていないが、(部下の)検事がそう説明しているなら否定はしない」としたうえで「撤回前の供述は証拠関係と整合して十分信用でき、撤回しても(山岸氏の)嫌疑は十分に認められると考え、逮捕に踏み切った」と説明したという。

訴状などによると、田渕氏は、山岸氏の元部下らに対する取り調べで「プレサンスの評判をおとしめた大罪人だ」などと威圧。その後、元部下らは山岸氏の関与を認める供述に転じ、山岸氏は逮捕、起訴された。逮捕から248日間勾留され、取締役の地位を失い、精神的苦痛や経済的損害を受けたとしている。

大阪地検特捜部の業務上横領無罪事件 大阪府の学校法人「明浄学院」の元理事長が不動産会社プレサンスコーポレーション(大阪市)の山岸忍元社長らと共謀し、法人の土地の売却手付金21億円を横領したとして、大阪地検特捜部に2019年に逮捕、起訴された。大阪地裁は21年、山岸氏の関与を認めた元部下の供述を「核心部分に看過できない変遷がある」「虚偽の可能性が高い」と判断。山岸氏に無罪判決を言い渡し、確定した。

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