4月12日ごろ、旧ツイッターのXで、いわゆる「ママチャリ」に乗った女性が、ドライバーに向かって怒っている様子が収められたドライブレコーダーのものとみられる動画が投稿されました。

動画には女性の顔がはっきり分かる状態で言い争う様子が写されていました。

動画は翌日にかけて複数の「まとめアカウント」や「まとめサイト」などが転載し、拡散しました。

“ウソの字幕”で1200万再生も…

その後、広がる元となった投稿は削除されましたが、動画はTikTokやYouTubeでも広がり、第三者が女性の名前や住所などの個人情報や撮影場所を特定するような投稿を行ったり、こうした情報をまとめたりした投稿やブログサイトも複数現れています。

NHKがXの投稿を分析したところ、「ママチャリ」と「逆走」に関する投稿は以前はほとんどありませんでしたが、14日以降に急増し、きょう(17日)正午までで5万件を超えています。

第三者が編集を加えた動画も広がっていて、怒る女性の姿にウソの字幕を付けた動画はXで1200万回以上閲覧されています。

Xでの閲覧数=インプレッションを得ることで収益を稼ごうとするいわゆる「インプレゾンビ」による投稿も見られ、拡散がさらに進む状態になっています。

弁護士「拡散に加担 法的責任問われる可能性」

SNSでのトラブルに詳しい神田知宏弁護士によりますと、相手の許可がないままネット上に顔をさらすことは、公益目的がないことから肖像権の侵害などにあたる可能性があるとしています。

また、第三者が動画を加工して投稿することについても拡散に加担していることになり、名誉毀損で法的責任を問われる可能性があるとしています。

神田弁護士は「ネット上で攻撃対象を見つけてよってたかって攻撃するというのは今の時代ならではだと思います。投稿した側は『少し懲らしめてやれ』くらいに思っているかもしれないが、相手の権利を侵害している可能性があるので冷静になるべきだ」と話しています。

拡散で人権侵害 「まとめサイト」賠償のケースも

SNSや動画サイトなどで拡散された画像や情報が人権侵害にあたるとされたケースはこれまでにも起きています。

2018年には配信サイトの「ニコニコ動画」に自身が暴行されている動画を投稿された男性が、サイトの運営会社に対して動画の削除などを求める裁判を起こしました。

2020年に神戸地方裁判所は「動画の解像度は高くはないが、顔全体が写っている場面もあり本人と認められ、肖像権を侵害するものだ」として、男性の訴えを一部認め、運営会社に動画を削除するよう命じました。

また、2019年には茨城県の高速道路で起きたあおり運転の事件で、事件とは全く関係がない東京都内の女性の名前や顔写真が、車に同乗していた「ガラケー女」だとするウソの情報とともにSNSで拡散されました。

このケースでは、フェイスブックに投稿していた愛知県豊田市の元市議会議員が東京地方裁判所に賠償を命じられています。

また、いわゆる「まとめサイト」の運営者が賠償を命じられたケースもあります。

在日朝鮮人の女性がインターネット上の差別的な投稿を集めた記事で精神的な苦痛を受けたとして「まとめサイト」の運営者に賠償を求めた裁判で、2018年には記事が人種差別や女性差別にあたることを認めた上で、人格権を侵害しているなどとして運営者に200万円の賠償を命じた判決が確定しています。

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