世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者の遺族が、教団側から違法な勧誘を受けて献金被害に遭ったとして、教団や信者に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は10日、双方の意見を聞く上告審弁論を開き、結審した。判決は7月11日に言い渡される。
上告審弁論は結論を見直すのに必要な手続きで、原告側敗訴とした二審・東京高裁判決が見直される可能性がある。教団側による献金の勧誘行為を巡って最高裁が判断を示すのは初めてで、違法性などについて具体的に言及すれば同種事案にも影響を及ぼしそうだ。
一、二審判決によると、原告女性の母親は教団の信者で、2005〜09年ごろに計約1億円を献金するなどした。15年11月には「献金は自身の意思で行ったもので、返金や損害賠償を求めない」などとした教団宛ての「念書」に署名押印。半年後の16年5月、認知症の診断を受けた。
母親と女性は17年3月、念書は無効で違法な勧誘行為があったとして、教団と信者を提訴。母親は訴訟の途中で死去し、女性側は上告審で約6500万円の賠償を求めている。
上告審では①教団との間で交わした念書の有効性②信者による献金の勧誘の違法性――が争点となった。
女性側は上告審弁論で、母親は念書を作った時点で既に認知症を発症していたと考えられ、判断能力が衰えていたと強調。母親以外にも多くの信者が同様の合意を結ばされていることから「損害賠償を一方的に免れる不当な目的で作成されたのは明らかだ」とし、念書は無効と訴えた。
その上で「教団や信者が、先祖の因縁や地獄での苦しみについて語り、不安や恐怖をあおった上で、(母親に)財産を献金名目で交付させた」と指摘。多くの民事訴訟の判決でも、教団がこうした手法で多額の金銭を集めていたことは明確になっているとした。
これに対して教団側は、念書は被害認識のない母親が作成したもので有効だと反論した。不法行為を裏付ける証拠はなく、母親が「自分の意思で献金した」と話す録音が存在することなどから、違法な勧誘行為はなかったと主張した。
21年5月の一審・東京地裁判決は、将来的に親族が返金を求めることを懸念した母親が自ら希望し、正常な判断能力に基づいて作成したと認め、念書は有効と判断。教団に対して訴訟を起こす権利はないとして訴えを却下した。
信者の勧誘行為についても、不安や恐怖心をあおって献金させたとまでは言えないとして請求を棄却。22年7月の二審判決も支持した。
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