女性に身近な「生理」だが、男性は体験することがない。話題にするのをタブー視する風潮も残る。だが、知らないままでは、想像力を働かせることはできない。女子生徒のいない私立男子中高一貫校で5月、生徒らが生理について学ぶセミナーが開かれた。思いやりのある社会を目指す取り組みだ。

ナプキンに色水を吸収させる生徒たち=豊島区駒込の本郷学園で

◆ナプキンに色水、触った生徒の感想は…

 「生理は1カ月のうち3~7日、出血が続く。8割の人に生理痛があり、4人に1人が(出血量の多い)過多月経で悩んでいる。眠気やだるさなど、生理の症状は100人100通り」  ベンチャー企業「Be-A Japan」(ベアジャパン、東京都渋谷区)によるセミナーに参加したのは、東京都豊島区の本郷中学・高校で社会活動に取り組む部活「社会部」に所属する中高生24人と保護者4人。吸水サニタリーショーツの開発・販売を手がける同社代表の高橋くみさん(49)が生理の基礎知識を紹介すると、真剣な表情で聞き入った。

生徒らと生理について話す高橋くみさん(中央)=豊島区駒込の本郷学園で

 続いて、ナプキンやタンポンに経血を模した色水を吸収させる実験も。生徒らは指で触れてみて、「肌に付けたらぬれていて不快でしかない」「気持ち悪い」などと率直な感想を口にした。講師を務めた同社社員の中村千春さん(45)は「女性はこれを40年間、毎月数日間、下着に付け続けて過ごしている。想像力を持つだけで人に優しくできる」と語りかけた。  また、1月の能登半島地震の避難所で、運営側の男性の知識不足からナプキンが数枚しか配布されなかった話や、新型コロナ禍で顕在化した「生理の貧困」などを題材に、生徒らがグループで話し合った。

◆生理を知ることは、相互理解や災害の備えにも

高橋さん(手前)の話を聞く生徒たち=豊島区駒込の本郷学園で

 「生理は個人だけの話でなく、積み重ねが社会に影響している」と高橋さん。経済産業省が2月に公表した集計で、生理痛やPMS(月経前症候群)などの「月経随伴症状」による経済損失が年間計約5700億円に上ることも紹介した。  生理に関するセミナーや研修を取り入れる学校や企業は増えつつある。男女を問わず知識を得ることで、相互理解や災害への備えなどにつなげる狙いだ。  同部顧問で社会科教諭の松尾弥生さん(50)は「自分と違う目線で相手を見ることを若いうちに経験してもらい、人間としてパートナーとして行動できるようになってほしい」と期待する。副部長で高校2年の坂本創さん(16)は「これまで生理について触れたり考えたりする機会がなかった。相手と違うことを知り、思いやりを持って行動することが大事なのがわかった」と話した。    ◇   ◇    

◆進む商品開発「生理が足かせにならない社会に」

Be-Aの吸水ショーツ(裏返し)

 毎月やってくる生理期間を少しでも快適に過ごせるよう、商品の開発が進む。  Be-A社が開発・販売する吸水ショーツは下着自体が経血を吸収する構造。長時間快適に過ごせると好評だ。当初はオンラインや専門店のみで販売されていたが、首都圏を中心にドラッグストアなどでも取り扱われるように。同社は手術対応などでトイレに頻繁に行きづらい職種のある医療機関や、ナプキン交換に困難がある障害者の施設や団体などに寄贈している。  吸水ショーツはユニクロや無印良品、グンゼなども相次いで発売した。他に、膣(ちつ)内に挿入する月経カップや月経ディスクなどの商品も改良が進められている。  女性の健康課題を解決する製品・サービスを指す造語「フェムテック」はメディアで取り上げられる機会が増え、市場も年々拡大している。Be-A社の高橋さんは「生理が足かせにならず、男女全員が本当にやりたいことができる社会を願っている」と話す。 文と写真・長竹祐子 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 

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