貧困と生きづらさ、自らの体験通し描く注目のライタ- ヒオカさん(29)

 中国地方の過疎地の県営住宅で育った。「最貧困層が集っていた」。アルバイトを転々とする父は胃腸が弱く入院しがちで、母へのDVもあった。いじめにあい不登校に。閉鎖的でうわさが筒抜けの日常が嫌だった。関西の国公立大へ。格安のシェアハウスに身を寄せた。

 転機は、大学の労働経済学の授業。リポートの課題で、生い立ちをつづったときのことだ。「あなたの文章、とってもみずみずしいね」。担当教授は一番良い評価をつけてくれた。「私の文章って、もしかして、悪くないのかも」

 卒業後、就職で東京へ。いろんな人に会い、縁をつないだ。その一人に編集者がいた。文章を書く仕事がしたいと相談すると「あなたの体験は貴重だ。社会で弱い立場にいる当事者が文章を書くことはすごく価値がある」と促され、投稿サイト「note」に書き始めた。

 安定した職に就け――。「圧力」を感じてきた。多くのことを諦め、自分を押し殺してきた。自己表現はとんでもないぜいたくだったが、投稿が注目されて本になり、昨春、書く仕事で何とか食べていけるようになった。奨学金を返済中で今も余裕があるわけではない。それでも「書くこと」を手に入れ、喜びを感じる。メイクとファッションもそうだ。

 この3月、2冊目の著書「死ねない理由」を出した。「自分らしく生きられるようになり、人生を生き直しています」(文・写真 寺崎省子)

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