起訴されたのは、東京 品川区にあるIT関連企業「Abalance」の元執行役員、堀内信之被告(60)です。
東京地検特捜部によりますと、堀内元執行役員は、去年1月、子会社がベトナムで建設を進めていた太陽光発電パネルの部品の製造工場に関する未公開情報をもとに、自社の株およそ5300万円分を買い付けたとして、金融商品取引法違反のインサイダー取引の罪に問われています。
元執行役員は、起訴された内容について否認しているものとみられます。
IRに関する専門性が評価されてこの会社の執行役員に就任した直後に問題の株取引を行っていて、関係者によりますと、自社の株を買い付けた際、証券会社の問い合わせに対し、会社の幹部ではないと偽っていたということです。
会社の株価はベトナムの工場に関するIRが出されたあと急騰し、元執行役員は買い付けた株を売り抜け、およそ5000万円の利益を得ていたということです。
IR人材は「売手市場」に
NISAの拡充などで幅広い世代で関心が高まる株式投資。
海外の投資家からも割安感があるなどとして日本の株式が注目される中、自社の情報を積極的に発信して株価の上昇につなげようとIRに力を入れる企業が増えています。
企業のこうした姿勢は求人にも表れていて、人材サービス大手のリクルートによりますと、転職支援サービスでのIRに関する求人数は、去年までの7年間でおよそ3.7倍に急増しています。
IR人材には、投資家への発信力や投資家の声を集めて経営陣に伝える能力などが求められ、経験豊富な即戦力の人材を中途で採用したいという需要が高く、「売手市場」になっているということです。
企業のIR戦略を支援する会社の市川祐子代表は「IR担当は企業価値を適切に市場に伝えるなど投資家の窓口となる存在であるとともに、重要な情報を取り扱うため、倫理観やコンプライアンスが非常に問われる担当だ。そのため、企業側はそうした人材を配置するようにしなければならない」としています。
堀内元執行役員とは
堀内元執行役員は、東京証券取引所などに勤務したのち、多くの企業で株主や投資家向けに投資判断に必要な情報を提供するIRを担当し、SNS上では、その経歴から「歴戦のベテラン」とか「株価を上げる請負人」などとも呼ばれていました。
堀内元執行役員がかつてIR担当として勤務していた会社で働いていた男性は、NHKの取材に対し「人材マーケットでIRをきちんとできる人材は非常に少なく、採用が難しい。堀内氏は引く手あまたの経歴の人材なので、採用する側としては『東証にいたのか』という感じで、わりと簡単に決断した記憶があります」と振り返りました。
そのうえで「IRの部署は新商品の情報や会社の重要な意思決定などのインサイダー情報が集まる重要な場所で、対外的な窓口であり、会社の顔です。投資家とのつながりや投資家のマインドに関する知見をいかして活躍してくれると期待していたが、経歴をみてできるだろうと思っていたことがあまりできないということがあった。その後、採用にあたって会社に提出した経歴書に書かれていた複数の会社に実際は勤務していなかったことが発覚して、勤務を続けてもらうのは難しいという判断になった」と話していました。
堀内元執行役員は、さらに別の会社でIRを担当していた際に、インサイダー取引をしたとして金融庁から行政処分を受けていました。
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