胃の薬を受け取る間、食事がかゆなどに変更されるのは憲法36条が禁じる拷問だとして、大阪拘置所で勾留中の50代の男性被告=上告中=が5日、国に慰謝料1千万円の賠償を求めて大阪地裁に提訴した。食事制限は2年以上、続いているという。

 訴状によると、男性は2011年に胃の内容物が逆流して食道に炎症を引き起こす「逆流性食道炎」と診断され、胃酸を抑える薬の服用を始めた。21年7月に逮捕され、12月に同拘置所へ移送後、職員から「薬を支給する間は軟菜食を支給せざるをえない」と説明された。主食はかゆ、揚げ物は豆腐ハンバーグなどの大豆製品に、汁物の調味料も半分とされた。

 男性は拘置所に移るまでは食事制限をしなくても健康上の問題はなかった。拘置所での食事に食欲がわかず、「普通の食事にしてほしい」と何度も伝えたが、現在まで対応は変わっていない。身長約160センチの男性は当初体重57キロだったが、一時44キロまで痩せ、自ら歩くことができなくなったという。

 男性は「通常の食事ができることは医師に聞けばわかるし、症状の経過を観察しながら処置を検討することもできた」と主張。「制限食を2年以上強制され、妻が差し入れたパンや総菜で生活しなければならず、経済的・精神的負担を強いられている」と訴えている。

 提訴後、大阪市内で記者会見した男性の代理人の津金貴康弁護士は「食事制限が不要な人に対し、意思に反して制限食を与え続ける拘置所の処遇が適法と言えるのかと問いたい」と話した。

 大阪拘置所によると、拘置所の常勤医が定期的に入所者を診察し、健康状態に応じて軟菜食など提供する食事の種類を決めているという。同拘置所の新田航人調査官は「まだ訴状が届いていないが、訴状が届けば国として適切に対応したい」と話した。(山本逸生)

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