二つの被爆地で3日、8月の式典で奉納される原爆死没者名簿に、この1年に亡くなった犠牲者の名前を加える作業が始まった。

 広島市役所では元市職員で被爆者の池亀和子さん(82)と中本信子さん(81)が、昨年8月6日以降に死亡が確認された被爆者の氏名や享年、死没日を丁寧に記入していった。

 池亀さんは「これまで祖母や両親の名前を書いてきた。これが供養と思って、一生懸命書いています」。中本さんは「8月6日の悲惨な様子を思い浮かべながら、若い人にも知ってほしい、つないでほしいという気持ちで書きました」と話した。

 市によると、名簿は昨年の奉納時点で33万9240人。6月3日現在で新たに4100人の死亡が確認されたという。記帳は8月5日まで続き、6日に広島市中区の平和記念公園である平和記念式典で、原爆死没者慰霊碑に慰霊碑に納める。

 長崎市役所では被爆2世で書道講師の森田孝子さん(76)が死没者名簿へ名前を記す「筆耕」が始まった。2002年から担当し、今年は約3300人になる見通しという。

 森田さんはこれまでに母や父の名前も記してきた。「被爆者の悲痛な叫びにもかかわらず、いま世界では戦争が続いている。被爆者の方々が大切にされてきた平和への思いを、私たちがバトンをつないでいくことができるように、継承していかなければいけない」と述べ、「平和の思いを込めて、名簿を書かせて頂くことを誇らしく思っています」と話した。

 名簿は昨年8月時点で19万5704人分。国が定める被爆地域の外にいたとして被爆者健康手帳の交付を認められていない「被爆体験者」も含まれている。(魚住あかり、小川崇)

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