性同一性障害で男性から性別変更した女性が、自身の凍結精子で生まれた次女を認知できるかが争われた訴訟の上告審弁論が31日、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)で開かれた。女性と次女側が意見を述べ結審。判決は6月21日に指定された。
訴訟は次女が女性を相手取って認知を求める形で起こした。一、二審判決は「親子関係は成立しない」としたが、結論変更に必要な上告審弁論を開いたことで判断は見直される可能性がある。生物学上の父が生別変更後に子をもうけた場合の法律上の親子関係について最高裁が初判断を示す。
40代の女性は、凍結保存していた自身の精子を使って2018年に女性パートナーとの間に長女をもうけた。その後、性同一性障害特例法に基づいて戸籍上の性別を男性から女性に変更。20年に再度、凍結精子を用いて次女が誕生した。
長女に関しては、既に女性を父として認める司法判断が高裁段階で確定し、認知届も受理されている。上告審は、性別変更の審判後に生まれた次女との間に父と子としての法的な関係が認められるかが焦点となった。
この日の上告審弁論で、次女側は認知制度の本質は親と子の関係を形成することにあるとして「法律上の性別に特別な意味を置いていない」と指摘した。認知制度での父は、法律上の性別にかかわらず「遺伝子上の父」を指していると理解すべきだと訴えた。
特例法は子どもが成人している人の性別変更を認めている点にも言及。既に「女性の父」などは存在しており、今回のように性別変更後に子どもが生まれたケースで父子関係を認めたとしても「法的安定性を害することはない」と強調した。
女性側は次女側からの請求について争わない立場を取っている。弁論では女性本人が「請求を認める判決を求める」と述べた。
一審・東京家裁は22年2月、民法が「父は男性、母は女性」を前提としているなどとした。長女と次女のいずれについても女性との親子関係を認めるのは「現行法制度と整合しない」として請求を全面的に退けた。
同8月の二審・東京高裁判決は、長女と次女が生まれた時点における女性の性別に着目。長女は誕生した時点で男性だった女性に「父」として認知を求める権利があるとした。性別変更の審判を受けた後に生まれた次女についてはこの権利がないとして親子関係を認めなかった。
弁論後、次女側の代理人の仲岡しゅん弁護士は「子の権利を認める判決を期待している」と話した。
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