能登半島地震の被災地に向け、音楽家や俳優ら約30人が応援ソング「明日(あした)という名の種をまこう」を制作した。歌詞は、13年前の東日本大震災で家族を亡くした小学生から届いた手紙から着想した。楽曲の収益で能登の子どもたちに花の種を贈る。笑顔と心の彩りを取り戻せるように―。

応援ソングを披露する、俳優の長谷川初範さん(左)、シンガー・ソングライターの白井貴子さん(前列左から3番目)ら=中央区で

◆「明日という名の種をまこう」米米CLUBの金子さんが担当

 「荒れ果てた大地にも美しくひらく花がある」「明日も花はひらくよね」「光をなくしてしまった心にも芽吹く朝はやってくる」  日本橋で25日に行われたイベント会場。能登の未来への希望を込めた応援ソングがお披露目された。指揮は、音楽プロデュースを担当した米米CLUBの金子隆博さん。石川県かほく市の自宅が被災したマリンバ奏者の亀井恵さんらが、白地に色鮮やかな一輪の花をあしらったTシャツ姿で参加した。  応援ソングの制作を企画し、歌詞を手がけたのは、地面に花びらを敷き詰めて絵を描く花絵師の藤川靖彦さん(63)。2011年3月の東日本大震災の翌月から、被災地の学校などを訪ねて花を贈る「フラワーズエール」の活動をしてきた。同年6月、宮城県女川町の学校にバラ1500本を届けた際、お礼に届いた小学6年生の手紙が胸に残った。

◆「小さなアリがバラの花を見るためには」

 バラの花をいただき、ありがとうございました。震災から4ヶ月が過ぎようとしていますが、わたしは、生きたくても生きれなかった家族や親せきの分まで、毎日楽しく生きています。
 わたしは、真っ赤なバラと真っ青なバラがいままで見てきた花で一番好きです。そんなバラをおくってもらって、とてもうれしいです。小さなアリがバラの花を見るためには、するどいトゲを上らなければなりません。でも最後は美しい花を見ることができます。
 このアリのようにどんなに苦しい事があってもがんばって生きていきます。

東日本大震災の被災地から届いたお礼のメッセージを紹介する藤川靖彦さん=世田谷区で

 藤川さんは「読んだ時、涙が止まらなかった。13年間忘れたことはなかった」。今年1月、2016年に立ち上げた文化人のボランティア組織「クリエイティブユニットPAL」の有志で能登の応援ソングを制作する話が持ち上がり、この手紙から歌詞を考えた。「『頑張ろう』ではなく、アリがトゲを乗り越えて花を見られるような、前向きな希望につながるように」。制作にはオルケスタ・デ・ラ・ルスのNORAさん、俳優の長谷川初範さん、ともにシンガー・ソングライターの白井貴子さんと宇徳敬子さんらが参加した。  地震は元日に起きた。藤川さんは「この曲で大みそかのNHK紅白歌合戦に出て被災1年の能登を励ましたい」と意気込む。

◆「未来を花でいっぱいに」5万本の花絵

能登の復興を願って披露された花絵=中央区で

 25日のイベントでは能登の復興を願い、5万本のカーネーションで鮮やかな花絵12点が制作された。今秋には被災地の学校に花壇をつくるほか、コンサートなども企画するという。藤川さんは「応援ソングが多くの人に歌い継がれ、被災地の未来が明るい花でいっぱいになるように」と願う。

◆CDを販売 収益は能登の子に贈る種に

 「明日という名の種をまこう」のCDは30日から販売される。1100円。購入は「フラッシュライトレコーズオンラインストア」から。

「明日という名の種をまこう」のCD

文・野仲正夫/写真・市川和宏、野仲正夫 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。


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