最長20年の運転延長が29日に認められた関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)が抱える大きなリスクの一つが、使用済み核燃料だ。このまま稼働して増え続ければ、3年で原発内のプールがいっぱいになる。関電は原発構内に貯蔵施設を新たに造り、そこに移す計画を示すが、工期は綱渡り。原発の老朽化や事故時の避難の実効性など、問題をはらんだままの稼働が続く。(荒井六貴、渡辺聖子)

◆使用済み核燃料の行き場ないと稼働停止も

原子力規制委員会の山中伸介委員長

 「燃料の管理は事業者の責任。プールが使用条件を満たさなければ、運転は認められないというのが規制委の立場になる」。運転延長を認めた原子力規制委員会の山中伸介委員長が29日の記者会見で、切迫する使用済み核燃料の取り扱いについて述べた。  関電によると、高浜では使用済み核燃料計3758体をプールで保管できる。既に86%に当たる3223体(4月末現在)を収容している。このまま稼働し他に移す場所がなければ、約3年でいっぱいになり、稼働を続けることができなくなる。

◆県外搬出が見通せず、構内に保管しようにも工期ギリギリ

日本原燃が青森県六ケ所村で運営する使用済み核燃料再処理工場(資料写真)

 本来なら、使用済み核燃料は再処理工場(青森県六ケ所村)に搬出し再利用する計画だが、工場の完成が見通せない。一時保管する中間貯蔵施設の計画も山口県上関(かみのせき)町で浮上したが、具体化はまだ。搬出先は宙に浮いている。  関電は2023年10月、福井県に工程表を示し、原発構内での貯蔵施設の建設を表明。高浜では工期を25~27年ごろとし、プールが満杯になるまでギリギリの計画を打ち出した。工事が少しでも遅れれば、稼働停止の可能性もある。  ただ、貯蔵施設ができても、福井県が求める県外搬出の根本的な解決にはならず、問題の先送りにすぎない。

◆そもそも老朽化で安全性に疑問符

 岸田政権が原発の新増設も認める方針を示すのに、関電が老朽原発にこだわるのは、新設に1兆円超ともされるコストがかかるからだ。原発が安い電源ではないことの証左でもある。

関西電力高浜原発3号機(左)と4号機(右)=資料写真

 老朽化には、福井県の専門家会合でも「点検して安全だからそのまま使うというが、危険性が眠っているかもしれない」との懸念が示された。核燃料の核分裂反応で生じる中性子線を受け続けると、交換できない圧力容器の金属がもろくなる。高浜ではMOX(プルトニウムとウランの混合酸化物)燃料を使い、劣化も早いとみられる。緊急時に急激に冷やすと破損の恐れさえある。

◆事故時の避難問題も解決していない

 事故時の住民の避難の問題もある。高浜町によると、半島の付け根にある原発から半島先端にかけての音海(おとみ)地区には、約90人が暮らす。陸路なら、原発に向かっての避難を強いられる。  計画ではヘリや船を使うことも想定。だが、地震でヘリポートや港などが壊れる恐れがある。訓練で、天候が悪くヘリが飛べなかったこともあった。住民から「ヘリに乗る順番は」「高齢者が高台のヘリポートに行くのが難しい」などの声が出た。  能登半島地震では、同様に半島の付け根に位置する北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の5~30キロ圏で、少なくとも154人が孤立したことが判明した。国は対策を検討するというが、解決策は示されていない。 

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