ネット上で無料公開されている「対話型生成AI」を使ってコンピューターウイルスを作ったとして、警視庁は無職の林琉輝(りゅうき)容疑者(25)=川崎市幸区古市場1丁目=を不正指令電磁的記録作成容疑で逮捕し、28日に発表した。生成AIを使ったウイルス作成の摘発は異例。

 サイバー犯罪対策課によると、林容疑者は昨年3月、自宅のパソコンやスマートフォンを使い、ネット上で無料公開されている複数の生成AIにアクセス。不正プログラムの設計図となる「ソースコード」を作らせ、企業などが持つデータを破壊するウイルスを作成したという。容疑を認め、「生成AIなら何でもできると思った」「(企業を脅して身代金を要求する)ランサムウェアを作ろうと思った」と供述しているという。

 被害は確認されていないが、作成されたウイルスには標的のデータを暗号化し、身代金を要求するための機能などがあった。

対策不十分なAI狙ったか

 生成AIを巡っては、米国の「オープンAI」が2022年11月に対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を公開。以降、同様の生成AIはネット上に多数公開されている。主要な対話型生成AIは、犯罪に悪用されかねない悪質な指示に回答しないよう対策が強化されている。だが、ネット上には悪用対策が不十分な生成AIが存在し、林容疑者はそれらを使ったと同課はみている。

 林容疑者は今年3月、スマホのSIMカードを不正に契約したとして詐欺などの容疑で警視庁に逮捕された。捜査の過程で自作ウイルスが見つかったという。

 不正利用による影響が懸念され、近年は各国で規制の動きが高まっている。欧州連合(EU)では今月21日、世界で初めてAIを包括的に規制する「AI法」が成立。危険度に応じた義務を課し、違反者には制裁金を科す。日本でも今月22日、政府が「AI戦略会議」を開催し、AIの安全性確保に向けた法規制の検討を始めた。(御船紗子)

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