栃木県那須町で2017年、スキー場周辺で登山講習中の県立大田原高の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた教諭ら3人の判決が30日、宇都宮地裁(滝岡俊文裁判長)で言い渡される。検察側は「漫然と訓練を行い、過失は重大だ」として禁錮4年を求刑、弁護側は「雪崩の発生は予見できなかった」と無罪を主張している。

3人は責任者だった猪瀬修一被告(57)と、生徒を引率した菅又久雄被告(55)、後続班を率いた渡辺浩典被告(61)で、当日の講習内容を登山からスキー場周辺の深雪歩行訓練に変更を決めた。猪瀬被告は講習会の本部があった旅館に待機し、菅又、渡辺両被告は現場で直接引率していた。

22年10月に始まった公判は17回にわたり、雪崩発生を予見できたのか、事故を回避するための安全確保の措置を講じたのかが主な争点となった。

検察側は今年2月の論告で、現場は植生がまばらな急斜面で雪崩が発生しやすく、約30センチの新雪もあったことなどから危険性を知り得たと指摘した。学校教育の一環で生徒の安全を最優先にするべきなのに情報収集を怠り、明確な訓練範囲を決めなかったとし「当たり前の安全対策をすれば事故を防げた」と述べた。

弁護側は最終弁論で、雪崩発生の予見は不可能だったとし「安全な訓練のため必要な情報収集をし、範囲も定めて各班に伝えた。3人の行為と死傷事故に因果関係はない」と反論した。

起訴状によると、17年3月27日朝、前夜からの積雪で雪崩発生を予想できたのに気象状況や地形確認などを怠り、急斜面で歩行訓練を実施し、雪崩に巻き込まれた8人を死亡、5人にけがをさせた。引率した菅又、渡辺両被告は危険回避の明確な指示や無線での情報共有も怠ったとしている。〔共同〕

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