福岡県民は飲酒運転を知ったら通報しなければならない――。県条例にそんな義務がうたわれて来月で4年。昨年の通報は2千件を超えたが、いまだ飲酒運転による事故はなくならない。県警は通報者を表彰したり、各地に出向いたりして啓発を図る。
4月19日正午ごろ、福岡市博多区の焼き肉店。「車で来ていないですよね」。店長の秋山博史さん(44)は、生ビール2杯を注文した60代の男性客2人に声をかけた。2人は「代行(運転)で帰る」と言ったが、3月にも「車で来ていない」と言って飲酒しながら、車で退店していた。「一度ウソをつかれて放っておけない」と110番通報。博多署員が駆けつけ、パトカーで車をブロックし、説得の末、2人はタクシーで帰宅した。
5月16日に博多署に表彰された秋山さん。頭にあったのが、県飲酒運転撲滅条例だ。2012年に施行され、飲酒事故の下げ止まりなどを受けて20年に県民の通報義務が加わった。店内には飲酒運転の通報を呼びかけるポスターを貼っていた。
県警交通企画課によると、飲酒運転の通報は16年に1264件だったが、昨年は2250件と倍近くに。そのうち265件を検挙した。
ただ、飲酒事故ゼロには遠い。減少傾向にはあるが、昨年は87件(前年比4件減)起き、6人が死亡(同3人増)した。今年は4月末までに41件(同12件増)と昨年を上回るペースで起きている。
さらなる通報の広がりにつなげようと、県警は企業や学校に出向き、飲酒運転を見かけた想定で通報する訓練を続けている。4月23日には、県立香住丘高校(福岡市東区)で全校生徒約1200人を前に実施した。参加した3年の中村菜々子さん(17)は「通報義務は知っていたが、実際に飲酒運転を見たことがなかったので参考になった。飲酒運転の加害者にも被害者にもならないよう気をつけたい」と話した。(山本達洋、小川裕介)
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