将棋の福間香奈女流王位(32)=清麗・女流王座・女流名人・倉敷藤花=に加藤桃子女流四段(29)が挑戦していた第35期女流王位戦5番勝負(東京新聞主催)の第3局は23日、福岡県飯塚市の麻生大浦荘で指され、午後4時14分、先手番の福間が115手で勝ち、3勝0敗でタイトルを防衛、女流王位6連覇(通算10期)を達成するとともに五冠を堅持した。

女流王位戦第3局で加藤桃子女流四段(背中)に勝ち、感想戦で対局を振り返る福間香奈女流王位

 持ち時間各4時間のうち、残りは福間111分、加藤41分。福間が得意の中飛車で加藤の仕掛けをとがめて先勝した今シリーズ。第2、3局も加藤の攻めを受け止めてから鋭く反撃し、一気に寄せ切った。今回の防衛で、女流タイトル獲得数を通算58期とし、歴代単独1位の記録を伸ばした。  加藤は4期ぶり2回目の女流王位挑戦だったが、序盤の工夫もはね返され、初獲得はならなかった。  対局の模様は女流王位戦特設サイトでも紹介している。

◆福間「要所で時間を使い考えた」

 福間香奈女流王位の話 8八歩成(52手目)のあたりは読み切れていたわけではない。7九角打(59手目)と角を2枚投入し、1五歩(61手目)からの端攻めは神経を使った。第1、2局とも力戦で難しい将棋。自分なりに要所で時間を使い考えることができた。

◆加藤「準備段階から甘かった」

 加藤桃子女流四段の話 序盤は不満。準備段階から甘かった。7九角打(59手目)では、7九銀だと思って読んでいた。7五歩(74手目)を的確にとがめられた。第4局がなく、申し訳ありません。ふがいない将棋が多く、全体的に課題がたくさん残ってしまった。

 福間香奈(ふくま・かな) 1992年生まれ、島根県出雲市出身。森雞二・九段門下。2004年、女流2級で女流棋士に。08年、初タイトルの倉敷藤花を獲得。11年、奨励会入会。18年、三段で奨励会退会。19年、女流六冠を達成。

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◆角2枚が躍動、流れるように

 「芸術的」な手順で6連覇達成ー。福間香奈女流王位(32)が加藤桃子女流四段(29)を下し、3連勝で防衛を決めた第35期女流王位戦(東京新聞主催)の第3局。福間は自陣の2枚角を攻めに躍動させ、流れるような指し手で一気に勝負を決めた。

6連覇を果たし、笑顔を見せる福間香奈女流王位=23日、福岡県飯塚市で

 先手の福間が中飛車を選択し、加藤が左美濃に構えて第1局と似た展開となった本局。加藤が角切りの攻めを含みに8七歩(50手目)と打つと、福間は歩を打って受けず、7九角(51手目)と強気に対抗した。ここで加藤は、女流王位戦では過去最長となる1時間32分の大長考に沈んだ。

◆立会人もうなる好手順

 昼食休憩が明け、加藤は攻めを決行。6六角(54手目)と切って飛車の成り込みに成功した。しかし福間は7九角打(59手目)と受けると、2枚角のにらみで1筋から反撃に出た。  非勢とみた加藤は7五歩(74手目)と攻めに活路を見出そうとしたが、先手は3三歩(75手目)から7五角(89手目)と角を転回。これが立会人の中田功八段も「芸術的なさばき」とうなる好手順で、たちまち後手玉は危ない形に。福間は4二角成(99手目)から9七角と2枚目の角も活用すると、最後は鮮やかな詰みに討ち取った。   ◇  ◇

◆結婚を発表、「将棋にも集中できる」

 互いの気迫がぶつかった対局を終え、表情を緩めた。「一手一手が難しい将棋だったのでほっとした。苦しかった2局目に勝てて、良い流れをつくれた」と今シリーズを振り返る。じっくり攻めてくる相手に冷静に対処した。  16歳だった2008年に初タイトル。その後、次々とタイトルを獲得し、現在も女流八大タイトルのうち五冠を保持するトップランナー。  結婚したことを今年1月に発表し、旧姓の里見から福間に改姓しての活動が始まった。「生活習慣が良くなったかなと思います。将棋にも集中して取り組めている」。2月には失冠していた女流名人を奪還し、ますます充実した活躍を見せている。  タイトルの通算獲得数は58期になり、60期の大台も見えてきた。「今回、戦型選択で考えるところもあった。幅広い指し方ができるように、これからも一つ一つの対局に全力を尽くしたい」。さらなる高みに向けて表情を引き締めた。島根県出雲市出身。(諏訪部真) 

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