2019年参院選をめぐる大規模買収事件で、河井克行元法相(61)から現金30万円を受け取ったとして公職選挙法違反(被買収)の罪に問われた元広島市議の木戸経康被告(68)の控訴審判決が22日、広島高裁であった。森浩史裁判長は罰金15万円、追徴金30万円とした一審・広島地裁の有罪判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。

 木戸被告側は昨年8月、取り調べの録音データの一部を文書で公表した。検事から「議員を続けていただきたい。否認にしたくない」などと言われ、不起訴を示唆されて供述を誘導されたと主張。公訴権の乱用を訴え、公訴棄却を求めていた。

 森裁判長は、「渡された現金に選挙運動報酬が含まれると認識していたと推認できる」と認定。検察官が不起訴を前提に取り調べ、被告は不起訴を期待して意に沿う供述をしたことは否定できないと指摘する一方で、検察審査会の議決を踏まえて起訴されていることから公訴に違法性はないとした。一審と同じ判断だった。

 判決後、木戸被告は「高裁ではきちんと判断していただけると考えていましたが、本当に残念です」とするコメントを出した。

 最高検は昨年12月、調査報告書を公表し、不適正な捜査があったと結論づけたが、不起訴を約束して虚偽供述をさせたものではないと判断し、組織的な指示はなかったとしている。

 河井元法相の大規模買収をめぐっては、地方議員ら100人に計約2900万円を提供したと東京地裁が認定。その後、東京地検特捜部は100人全員を「やむを得ず受け取ったり返還したりして受動的な立場だった」として不起訴処分にした。だが、市民団体の申し立てを受けた東京第六検察審査会は21年12月、100人のうち35人を起訴相当と議決し、検察は起訴相当の35人のうち9人を在宅起訴し、25人を略式起訴していた。(大野晴香)

「起訴相当」議決を受けた35人は

・有罪確定 27人(うち略式22人、正式裁判5人)

・高裁、最高裁で係争中(いずれも一審有罪) 7人

・不起訴 1人

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