1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)の裁判をやり直す再審公判で、検察側は22日午後、「被告が犯人だと合理的疑いなく証明できる」として、袴田さんに確定審と同じ死刑を求刑した。

  • 巌より 袴田さん獄中からの手紙

 事件では、強盗殺人や放火などの容疑で袴田さんが逮捕・起訴され、公判では一貫して無罪を主張した。一審・静岡地裁は68年に死刑を言い渡し、80年に確定。その後、弁護側の第2次再審請求を受け、2014年に静岡地裁が再審を決定。最高裁の差し戻しを経て、23年に東京高裁も再審開始を支持した。

 昨年10月に静岡地裁で始まった再審公判で、検察側は改めて袴田さんの有罪を主張した。確定審の様々な証拠などを踏まえ、「被告の犯人性を裏付けている」と述べた。

 公判の最大の争点で、袴田さん逮捕から約1年後にみそ工場のタンクから見つかった「5点の衣類」については、「犯行着衣で事件後に袴田さんが隠した」と強調した。

 これに対し弁護側は、再審請求審で裁判所が「5点の衣類は捜査機関による捏造(ねつぞう)の可能性が高い」と指摘したことから、「証拠としての価値はなく、証拠から排除されなければいけない」と反論。検察側の主張には様々な疑いがあり、「有罪立証を放棄すべきだ」と述べていた。

 過去の再審公判で検察側は、1980年代に死刑囚が無罪となった4事件で確定審と同じ死刑を求刑。茨城県利根町で起きた強盗殺人「布川事件」でも、確定審と同様に無期懲役を再び求刑したが、判決は無罪だった。

 一方、「東京電力女性社員殺害事件」や「松橋(まつばせ)事件」などでは、有罪立証をしなかった。(金子和史)

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