かつて、2匹の猫と暮らしていた。もし災害が起きていたら、私は2匹のことを守れたのだろうか。1月上旬、能登半島地震が起きた石川県珠洲市の取材班に北海道から加わった。現場で、そう自問させられた。
被災地では犬と散歩をする人を見かけたが、多くの避難所ではペットの姿はなかった。車中で過ごしていたからだ。
被災し、愛犬「ケンシロウ」を一時的に保護団体に預ける選択をした男性(56)と出会った。2人は津波にのまれたが生き延びた。だが、男性の自宅は津波で1階が土砂まみれ。家具も散乱して室内を自由に行き来できなかった。津波で車を流され、避難所の玄関前にある「風除室」で生活していた。ただ、そこも残り数日で出ないといけない。
ペットショップに預ける費用は月額14万円。飲食店を営む自宅は被災。収入のめどもなく、一時的に保護団体に預ける決断をし、シバイヌのケンシロウは遠く、浜松市に行くことになった。
「絶対に珠洲に戻ってくる」。避難所で男性はそう話した。言葉やふるまいに芯の強い人だと感じた。ただ、愛犬との別れの瞬間は震えた声で話し、寂しい思いを抑えこむかのように唇をかみしめた。
男性の他にも、行方不明の猫を捜したり、犬と避難所に入れず車中泊を続けたり、ペットを巡って不安な思いを抱える人は多くいた。
環境省は東日本大震災を契機に、ガイドラインでペットとの「同行避難」を推奨する。今回、同行避難をした人は多くいたが、一緒に過ごす「同伴避難」の可否は避難所で判断が割れた。
自治体ごとに備えを進めることが望ましいが、個人でも近所の受け入れ体制の確認やペット用の備蓄品を確保するなど、いざという時に大切な「家族」の安全と健康を守れるよう、万全に備えておきたい。(古畑航希)
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