東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で2014年に収容中のカメルーン人男性(当時43)が死亡したのは、入管が救急搬送を要請する義務を怠ったためだとして、男性の母親が国などに損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(増田稔裁判長)は16日、国に約165万円の賠償を命じた一審・水戸地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却した。

 原告弁護団によると、一審判決は、入管の収容者の死亡をめぐり国の責任を初めて認めた。

 男性は13年10月、成田空港に到着したが、上陸が認められず、退去命令に応じなかったことから翌月に同センターに収容された。糖尿病などを患い、薬の服用や医師の診察を受けていたが、翌年3月に死亡した。亡くなる前夜には複数回にわたって「I’m dying(死にそうだ)」と大声をあげていた。

 地裁判決は、亡くなる約1カ月前から男性が胸の痛みを訴え医師から薬を処方されていた点などをふまえ、遅くとも男性が死亡前夜に30分以上、声をあげて苦しんだ時点で「救急搬送を要請すべき義務があった」と判断。職員らの注意義務違反の程度は軽くなく、搬送されていれば男性が生存できた「相当程度の可能性」があったと認め、慰謝料などの支払いを命じた。

 一方で、男性の死因は断定できないとし、職員らが救急搬送を要請しなかったことと死亡との因果関係は認められない、と判断していた。(米田優人)

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