スキマ時間を使って、介護施設でお手伝いをしてもらえませんか―。人手不足に悩む介護事業所と、有償ボランティアをインターネットで結ぶマッチングサービスがある。その名も、「助っ人」転じて「スケッター」。若手経営者が発案し、首都圏を中心に利用する施設や人を増やしている。(出田阿生)

「スケッター」に登録し、食事の配膳を手伝うボランティアの学生=東京都内で

◆専門職でなくても「有償」ボランティア

 「介護の現場では、資格が必要な専門職でなくてもできる仕事がある。そこに可能性を見いだした」と語るのは、サービスを提供する株式会社プラスロボ(東京都港区)の最高経営責任者(CEO)鈴木亮平さん(31)だ。介護業界に関心があり、大学卒業後に介護ロボットの販売代理店を1年やってみたが「ケアの仕事は生産性や効率化と相いれない。結局は人手が必要だと痛感した」という。  高齢化で介護職員の需要は急増し、人手不足は深刻だ。2019年と比べて25年は介護職員の需要が32万人増加すると、厚生労働省は試算する。そこで介護以外の分野で、食事の配膳や片付け、話し相手やイベントの手伝いなど、無資格・未経験でもできる業務があることに着目した。

◆全国で延べ5000人が登録

 ネット上で家事や買い物代行を募集するマッチングサービスにヒントを得て、19年からスケッターのサイトを開設した。現在、全国で延べ約5000人の有償ボランティアが登録。介護事業所が募集を出し、スケッターとして登録した人の希望とマッチングする。

高齢者施設で歌を披露するスケッター=東京都内で

 スケッターはレクリエーションの時間に音楽を演奏したり体操や書道を教えたりするなど、特技も生かせる。介護事業所を紹介する交流サイト(SNS)の発信や動画編集も活躍が期待できる分野だ。  介護事業所はシステム利用料のほか、交通費込みの謝礼をボランティアに支払う。時給の最低価格は500円以上と規定。1時間1000円程度のところが多いという。生計を立てられる報酬ではないだけに「おしょうゆの貸し借りのような助け合い精神でやっていただけたら」と鈴木さんは話す。

◆ボランティア自身の社会参加にも

 これまでに、長野県内の社会福祉協議会や東京都中野区と協定を締結した。茨城県大子町では「登録してくれているのは大半が元気な高齢者」で、ボランティア自身の健康促進や社会参加に役立てる目標がある。

協定書を交わしたプラスロボの鈴木亮平さん(右)と奥ノ木信夫市長=埼玉県川口市で

 若者の職場体験に生かせることもあり、登録者は10~30代が約6割を占める。大阪府や広島県では大学と提携し、福祉を学ぶ学生の体験学習に活用する。川崎市ではハローワークと連携している。  課題は認知度の向上だ。方策として、埼玉県川口市では今年7~9月の3カ月間、介護事業所がマッチングを無料で試用できる期間を設け、サービス自体の周知などをしていくという。  数カ月前から、川口市でサービスを利用している有料老人ホームの担当者は「洗い物の仕事などをやってもらって職員は助かっている。毎回初めてのボランティアが来ることが当初は懸念材料だったが、簡単な指示でやってもらえると分かって安心した。今後はレクリエーションの講師も来てもらえたらと願っている」と話す。 

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