中教審特別部会の貞広斎子部会長(左)から教員働き方改革・処遇改善策についての提言を受け取る盛山正仁文部科学相
給特法を巡っては、現職教員らから「定額働かせ放題」の温床だとして廃止を求める声があるが、提言は調整額増にとどまった。◆給特法廃止は見送り、調整額を4%→10%以上へ
提言では、全ての教員の残業時間が月45時間以内になることを目標に、教員業務の適正化を推進。終業から次の始業までの休息時間「勤務間インターバル」を11時間を目安に確保することなどを盛り込んだ。 小学校教員の授業を軽減するため、現在は5、6年で実施している教科担任制を3、4年でも推進するという。また新人教員をいきなり学級担任とせず、まずは教科担任を務められるように定数改善をすることが必要だとしている。 働き方改革と教育の質向上を両立するため、教員以外の支援スタッフの充実の必要性も強調。副校長・教頭を補佐するマネジメント支援員の配置、部活動指導員の充実も盛り込んだ。 貞広斎子部会長(千葉大教育学部教授)から提言の説明を聞いた盛山文科相は「しっかり受け止め実現に全力を挙げたい」と応じた。◆残業はボランティアのまま「登るべき山を間違えている」
「0点。良くて100点満点で10点。これでは10年たっても残業は減らない」。岐阜県立高教員の西村祐二さん(45)は13日、中教審特別部会の提言を手厳しく批判した。中教審部会提言の再考を求める岐阜県立高教員の西村祐二さん(右から2人目)、教員志望学生の宇恵野珠美さん(右)ら=13日、東京・霞が関の文部科学省で
この日、教員働き方改革を求める三団体が文部科学省内で会見し、中教審特別部会の提言の問題点を指摘した。西村さんは、給特法が「定額働かせ放題」の温床だとして廃止か抜本見直しを訴えている「有志の会」として発言した。 「教職調整額を上げるのみ、という小幅な見直しにとどまったのは決定的な失策。残業は自発的ボランティア扱いのまま。新しい教師を確保するどころか、ベテラン教師に失望を与えている。文科省、中教審は結果責任を負ってほしい。数年後に検証し、引き続き議論してほしい」と訴えた。 公立校教員を志望している中央大4年の宇恵野(うえの)珠美さん(22)は、教育実習の事前指導で多忙さを知り、教員を諦めた友人の話を紹介。「仕事でもプライベートでもやりたいことができない、労働に見合った対価ももらえない。教師の魅力を低いものにする最大の原因だと思う」と話し、「給特法がある限り、教師は際限なく働かされる。公立教員志望学生が希望を持てるように、廃止してほしいと思います」と話した。 「文科省は、登るべき山を間違えている」と指摘するのは、愛知工業大の中嶋哲彦教授(教育行政学)。「教員を増やして、長時間勤務を減らすのが、登るべき山。それをせず、教育委員会や学校に『マネジメントで何とかせよ』。これでは遭難するしかない」として、議論のやり直しを求めた。(榎本哲也) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。