神戸市役所の設備点検中に転落し後遺症を負った男性(28)が、「安全性を欠いていた」などとして市や派遣先の会社に計約1億9千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10日、神戸地裁であった。天野智子裁判長は、市と会社に約1億4千万円の賠償を連帯して支払うよう命じた。

 判決によると、男性は派遣社員だった2017年7月、市役所本庁舎3号館にある熱感知器の点検のため、2階と3階の踊り場にある点検口を開けてダクトスペースへ進入。しかし吹き抜けの構造で床がなく、約5.8メートル下に転落し、脊髄(せきずい)損傷による下半身まひの後遺症を負った。

 男性は8階から順に下の階へと点検を始め、他の階は点検口の先のダクトスペースに熱感知器があったが、この階は点検口がありながらその先に床のない構造だった。

 判決は、事故のあった階の点検口の鍵が破損して開閉できる状態だったうえ、床のない危険箇所だと男性に伝わっていなかったと指摘。「市が措置を適切に講じていれば事故が発生していなかった高度の蓋然(がいぜん)性が認められる」として市の責任を認定した。

 現場を指揮した派遣先のメンテナンス会社「京津管理」(京都市)に対しても、危険事項などを確認しなかった注意義務違反があったと認めた。

 賠償額について判決は、後遺障害による逸失利益を約7610万円、将来の介護費を約5460万円、慰謝料を約3110万円などと算定。男性本人にも一定の過失があったとして1割を過失相殺した。

 市は取材に「判決内容を確認した上で、対応を検討する」。京津管理は「担当者不在のため回答できない」としている。(原晟也)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。