自民党派閥の政治資金規正法違反事件で、同法違反(虚偽記入)罪に問われた安倍派(清和政策研究会)の会計責任者、松本淳一郎被告(76)の初公判が10日、東京地裁(細谷泰暢裁判長)で開かれた。松本被告は罪状認否で起訴内容を大筋で認めた。一連の事件が公開の法廷で審理されるのは初めて。
松本被告は政治資金パーティー券収入のノルマ超過分を派閥の政治資金収支報告書に記載しなかった事実は認める一方、所属議員が派閥に納めず事務所でプールしていた分は当時認識していなかったとして不記載額を争う姿勢を示した。
続く冒頭陳述で検察側は、安倍派では所属議員に政治資金パーティー券の販売ノルマを課す一方、超過分は議員側に還流していたと指摘。超過分は派閥の収支報告書に記載しない運用が続けられてきたと主張した。派閥に納付せず議員が手元でプールすることも認めていたとした。
2019年に会計責任者兼事務局長に就任した松本被告は前任者からこうした運用を引き継ぎ、虚偽記入の認識があったものの、これまで発覚してこなかったことから継続することにしたと強調。一方で収支報告書の作成は主に派閥の事務局職員が行い、幹部議員らが関与することはなかったとした。
起訴状などによると、松本被告は2018〜22年に政治資金パーティーを巡る約6億7千万円の収入・支出をそれぞれ派閥の政治資金収支報告書に記載しなかったなどとされる。
次回の公判は6月18日。松本被告の被告人質問が行われる。実態を知りうる立場にある松本被告の証言内容などが注目される。
一連の事件で東京地検特捜部は1月、安倍派と二階派(志帥会)、岸田派(宏池会)の当時の会計責任者や現職国会議員3人ら計10人を起訴・略式起訴した。派閥の実務を取り仕切っていた歴代事務総長ら幹部議員はいずれも立件を見送った。
二階派元会計責任者の初公判は6月19日に開かれる。派閥からの還流分の不記載額が大きかったとして起訴された池田佳隆衆院議員(57)=自民を除名=、大野泰正参院議員(64)=自民を離党=と両議員の秘書の公判日程は決まっていない。
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