用水路に転落した80代の男性を助けたとして、埼玉県警小川署は、嵐山町の水島一子さん(72)ら3人に感謝状を贈った。男性に「大丈夫」と言われたため一度は帰宅したが、近所の知人に相談し、現場に戻ったことで保護につながったという。
4月1日の午前6時半ごろ。水島さんがゴミ出しを終えて自転車で帰宅中、道路脇の土手を下った場所に白いキャップ帽がちらりと見えた。近づくと高齢の男性が深さ50センチほどの用水路の中でしゃがみこんでいた。自転車もひっくり返って落ちていた。
用水路の水位は低かったが、男性の体はずぶぬれで上着とスラックスは泥だらけだった。水島さんが「大丈夫ですか」と声をかけると「大丈夫です」と返事があり、一度その場を離れた。
帰宅後、男性のことが心配になってすぐに近所の内田とし子さん(67)、正夫さん(65)夫妻に相談。一緒に見に行くことを促され、3人で男性の元へ向かった。最初に声かけしてから10分ほどたっていた。とし子さんは「おおげさかしら」と思いながらも110番通報した。
男性と自転車を3人で土手の上に引き上げたが、頭と口の中から出血があった。年齢や名前を尋ねると、男性はしっかりと答えてくれた。
「家はすぐそこで女房が待っている」と話す男性だったが、話を聞いていくと約50キロ離れた所沢市に自宅があるという。泥だらけの自転車を押して歩き出そうとする男性を、とし子さんは「ここからじゃ所沢には帰れないから、お巡りさんが来るまでちょっと待ってて」と引き留めた。
男性は警察に保護され、家族の元に帰った。署によると、前日から姿が見えなくなったといい、自転車で嵐山町まで来たとみられる。現場は人目につきにくい場所で、発見が遅れていれば命の危険もあったという。
4月18日にあった感謝状の贈呈式で、水島さんは「ご近所のチームプレーで、一人の人間を助けることができた」。内田さん夫妻は「警察に通報したことで尊い命が助かったことをうれしく思う」と振り返った。小川署の及川直美署長は「いつもと違ったことがあって通報を迷う場面では、ちゅうちょせずに110番をしてほしい」と語った。(宮島昌英)
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