日本の「伝統的酒造り」ユネスコの無形文化遺産 登録決定

【岐阜】酒造会社 “日本の皆さんもより深く知って”

岐阜県飛騨市古川町にある明治3年創業の酒造会社では5日朝、ユネスコの無形文化遺産への登録決定を祝う催しが開かれ、会社の社長が「社員一同誇らしく思います。普段から日本酒を飲んで下さっている地域の皆さんにお礼を申し上げ、喜びを分かち合いたい」とあいさつしました。

このあと、店の前ではくす玉が割られ、観光客や地元の人に升に注いだ新酒がふるまわれました。

この会社は海外から研修生を受入れたり、外国人観光客向けに酒蔵の見学を行うなど日本酒の魅力を海外に伝える取り組みに力を入れています。輸出は県内で最も多く、売り上げの7%を占めていますが、今回の登録をきっかけに、20%まで拡大したいということです。

「渡辺酒造店」の渡邉久憲 社長は「世界にアピールする大変よい機会ですが、人口減少などで国内の日本酒の消費量が減る中、これを機に日本の皆さんにもより深く知ってもらいたいです」と話していました。

【石川】能登半島地震で被災 “酒造りの文化 継続を”

ことし1月の能登半島地震で被害を受けた石川県珠洲市の酒造会社からは、復興に向けたこのタイミングでの決定に喜びの声が聞かれました。

珠洲市宝立地区にある酒造会社、「宗玄酒造」は、ことし1月の地震で、土砂が酒蔵に流れ込み、タンクが傾くなどの被害が出ました。

本格的に酒造りが再開できたのは、機械の修理が完了した9月になってからで、5日は、日本酒の瓶を包装紙で包む出荷に向けた作業が行われていました。

今回の決定について八木隆夫 社長は「地震が起きてからもお酒を出すことを使命として作り続けてきたので、このタイミングでの決定は喜ばしいことです。登録を機に酒造りの文化が今後も継続するように広く知ってほしいです」と話していました。

【京都】“需要拡大 地域の活性化を期待”

酒どころとして名高い京都・伏見ではユネスコの無形文化遺産登録決定が日本酒の消費拡大につながると期待が高まっています。
京都市伏見区にある大手酒造メーカー「月桂冠」が運営する施設では、明治時代に建造された酒蔵を転用した建物に、木おけや酒だるなど酒造りに使われきた道具が展示されていて、酒造りの歴史や製造工程を学ぶことができます。

今後、来館者がさらに増えることを見据えてこれまで非公開だった伝統的な酒造りを見学できるガイドツアーを新たに始めることにしていて、登録を追い風に日本酒の魅力をさらに発信していく考えです。

「月桂冠大倉記念館」の立花規志夫館長は「登録は非常にありがたく、励みになる。輸出を含めた需要が拡大し、伏見の活性化につながることを期待したい」と話しています。

【鳥取】“造り手減少も 進化していきたい”

鳥取県岩美町の創業100年を超える酒造会社では5日、もろみを発酵させるタンクに蒸した米や水、こうじを加える「仲添」とよばれる仕込みが行われ、杜氏の池成均さんらが丁寧に作業を行っていました。

池成さんは「誇りに思うとともに身が引き締まる思いです。日本酒文化を守ってくれた先輩や愛飲してくれる方に感謝したいです」と話しました。

県内では、おととしの日本酒の出荷量が752キロリットルと10年前の7割弱に減少しているほか、県酒造組合に加入している酒蔵も15年前と比べて半数近くに減るなど、造り手の減少が課題となっています。

池成さんは「登録によって海外からも注目されるので、文化を大事にしながら新しい技術も取り入れて時代とともに進化していきたい」と話していました。

【広島】市役所にお祝いの横断幕

10の酒蔵がある酒どころ、東広島市の市役所ではお祝いの横断幕が掲げられました。

横断幕は長さおよそ2メートルで、「祝『伝統的酒造り』ユネスコ無形文化遺産登録」と書かれています。

また、正面玄関には登録が決まったことを伝える手作りのポスターを掲げたほか、こも樽を置いて登録を祝いました。

東広島市ブランド推進課の丹下和貴 課長は「酒のまちである東広島市にとって大変喜ばしいことです。これを追い風にしてますます地域を盛り上げていき、多くの人に訪れていただける町にしていきたいです」と話していました。

【高知】“温暖化受け 新たな品種開発を”

高知県では地球温暖化により酒米の生育に影響が出ていて、県は、急ピッチで新たな品種開発を進めています。

高知県の酒蔵では県内産の酒米などを使って日本酒を造っていますが、高知県農業技術センターによりますと、地球温暖化によってコメが大きく成長する登熟期に高温にさらされ、酒米に含まれるデンプンの主成分アミロペクチンの構造が変化し、酒米が溶けづらくなっているということです。

日本酒を醸造する際、蒸した酒米に水やこうじなどを加えて発酵させますが、酒米が溶けづらいとアルコールの度数が高まらず、香りも出づらくなります。

こうした中、高知県農業技術センターは5年前から新たな酒米の品種開発を急ピッチで進めています。

「高系420」と名付けられた開発中の新たな酒米は、溶けやすい遺伝子を含んだ品種のもち米と酒米とを掛け合わせています。

県農業技術センターが高知県内で主に使われてきた酒米「フクヒカリ」と、「高系420」に水溶液をかけて15時間後に比較したところ、「高系420」のほうがより溶け出していました。

また、遠心分離機などを使った実験では、「高系420」が「フクヒカリ」よりも米の溶けやすさを示す値が1.76倍高かったということです。

県農業技術センターでは今後、酒の仕込みに使うなどの試験を重ねて、3年後の2027年にも一般に普及することを目指しています。

【沖縄】“泡盛の伝統的酒造り 世界に”

ユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まった日本の「伝統的酒造り」は、日本酒だけでなく焼酎や泡盛など、日本各地の気候風土に合わせて築き上げられてきた酒造りの技術が対象になっています。

泡盛の製造業者らでつくる沖縄県酒造組合の佐久本学 会長は「600年の歴史があり、先人たちがずっと受け継いできた黒こうじ菌を使った泡盛の伝統的酒造りが評価されたことは本当にありがたいなと思う。日本にも伝統ある蒸留酒があることを世界の人に知ってもらえるいいきっかけになればと思う」と歓迎しました。

そのうえで、「蒸留したあとに熟成させ、継ぎ足していく『仕次ぎ』という方法でまろやかな味の古酒として次の世代に残していけるのが泡盛の一番の魅力だ。そういったことも世界の人に伝わるとうれしい」と話していました。

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