旧ソ連のモルドバとジョージアで、欧州連合(EU)への加盟問題を左右する選挙や国民投票があった。いずれの国でも民意の分断が明らかになり、EU加盟への道は険しいと言わざるをえない。
モルドバでは10月20日に大統領選の1回目の投票とEU加盟の目標を明記する憲法改正に関する国民投票が行われ、11月3日には大統領選の決選投票が実施された。ジョージアでも10月26日に議会選があった。
問われたのは親欧米かロシアとの関係改善かという国の針路を巡る選択だ。欧米とロシアが激しい勢力争いを続ける旧ソ連西部の国々が、EUへの早期加盟に向かうのかを占う注目の投票だった。
モルドバは2022年に、ジョージアは23年にEU加盟候補国となった。だが、今回の投票結果は、加盟までに乗り越えるべき壁がいくつもあることを示した。
モルドバでは親欧米派のサンドゥ現大統領が再選を決めた。国民投票でもEU加盟への賛成が過半数を占めたものの、実情は多くの在外投票に助けられた薄氷の勝利であり、賛成多数だった。
政権側が指摘するロシアによる選挙への介入や不正は厳正に調査すべきだ。ただ、苦戦の理由はそれだけではないだろう。
厳しい経済状況に不満が広がり、若者を中心に人口の国外流出も続く。世界銀行によると、1人当たりの国内総生産(GDP)はEUの6分の1程度だ。EU加盟へ団結を促すためにも、政権は国民生活の改善を急ぐべきだ。
ジョージアの議会選では政権与党「ジョージアの夢」が約54%の得票率で勝利を宣言した。与党はEU加盟を掲げながらもウクライナを侵略するロシアに融和的だ。
親欧米派の野党勢力は与党による大規模な不正があったとして抗議デモを始めた。野党や欧米は、外国から資金提供を受ける団体を規制するなど民主主義を後退させていると与党を批判してきた。与党の政策転換がない限り、EU加盟交渉は凍結されたままだ。
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