小型無人機の軍事利用が広がっている=ロイター

【ワシントン=赤木俊介】米国と中国の対立が無人機(ドローン)産業に波及し、相手側の企業に対する規制や制裁の応酬が激しくなっている。米新興メーカーのスカイディオはこのほど中国による制裁の対象となり、重要部品であるバッテリーが不足する事態に陥った。同社は台湾やウクライナにドローンを供給している。

スカイディオは米国の有力ドローンメーカーだ。このほど「2025年春までバッテリーの仕入れ先が決まらない見通しだ」との声明を出した。バッテリーを調達していた中国から制裁を受けたためだ。同社は「供給網を『武器』に使っている」と中国政府の対応を非難した。

米国務省は6月、攻撃型ドローンを含めたおよそ3億6000万ドル(およそ547億円)分の台湾への武器売却を承認した。9月にはドローン調達網の「脱中国依存」に向け台湾との連携強化を目指す会合を開いた。

これを受け、中国が10月中旬ごろにスカイディオを含む複数の米企業を制裁対象に加えた。これにより、同社は部品調達が滞った。

スカイディオは「台湾での顧客は内政部(内政省)の消防署のみだ」と制裁に反発している。「(制裁は)業界を先導する米国のドローン企業を排除し、中国のドローン会社への世界的な依存を高める意図がある」としている。スカイディオはウクライナ軍にもドローンを供与している。

米国側も中国のドローン会社への締め付けを強めている。米連邦議会下院では9月、ドローン世界最大手の中国DJIの新型ドローンの米国内での販売と通信網への接続を禁止する法案が全会一致で可決した。米国防総省もDJIを中国人民解放軍の関連企業に指定している。DJIは10月、指定が誤りだとして米国で訴えを起こした。

ウクライナを含め、世界各地の紛争でドローンの利用が広がり、産業の安全保障上の重要性が増している。今後も応酬が続く可能性が高い。

スカイディオで連邦政策ディレクターを務めるジョー・バートレット氏は、DJI禁止法案を提案したエリス・ステファニク下院議員の国土安全保障アドバイザーを務めた経緯がある。スカイディオのアダム・ブライ最高経営責任者(CEO)は6月、米議会下院の公聴会で「中国は貿易を戦争の道具としている」と証言している。

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