イラン攻撃を表明したイスラエル軍のハガリ報道官(26日)=イスラエル軍提供・AP

イスラエル軍が26日、イランの軍事施設を攻撃したと発表した。イランによる1日の弾道ミサイル攻撃などへの反撃としている。再報復となれば中東の危機を一層深める。武力行使の応酬に歯止めをかけなければならない。

イスラエル軍はミサイル製造施設や防空システムをたたいたと強調した。イランは「限定的な被害」を認めた。詳細は不明だ。

攻撃は戦闘機や空中給油機を使ったと伝えられている。領空侵犯と空爆を許したのなら、イランは防空網の限界をさらしたも同然だ。威信を守るためにやり返す選択をすれば、中東の軍事大国同士が報復の連鎖に陥る恐れが強まる。最大限の自制を求めたい。

イスラエルはかねて反撃すると明言し、時期や手段が焦点だった。核開発施設や石油施設を狙う可能性も取り沙汰されていた。

仮にペルシャ湾の石油積み出し施設が打撃を受ければ、エネルギー価格が高騰しかねない。余波は世界に及ぶ。核施設への攻撃は、それ自体が極めて危険だ。

イスラエルの後ろ盾の米国は、早々に核・石油施設への攻撃に反対する姿勢を示した。米大統領選まで2週間を切り、ガソリン高はバイデン政権に逆風になる。中東の戦争に引き込まれるわけにいかないとの事情も、抑制的な対応を求めた背景にあるのだろう。

関係国の働きかけは引き続き重要だ。イスラエルに武器弾薬を供給する米国は特に役割が大きい。国際社会は双方に自制を求め続ける必要がある。交戦激化の危険は互いに自覚しているはずだ。

イスラエルは1日のイランのミサイル攻撃を防ぎきれず、軍基地に被害が出た。米軍に地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備を頼んだのは、防空網の穴を感じた証左だ。イランは外相がアラブ諸国を行脚し、イスラエルへのけん制に躍起だった。

今回、核・石油施設が攻撃を免れたからといって警戒を解くことはできない。両国が4月に互いの領土を攻撃して以来、直接交戦のハードルが下がったことを憂う。偶発的衝突の危険を伴う際どい作戦を練るのでなく、戦闘を収束させる努力に知恵を絞るべきだ。

両国の緊張は、昨年10月に始まったパレスチナ自治区ガザの戦闘から波及した。戦火はレバノンにも広がっている。状況は複雑化しているが、根源であるガザの停戦をまず実現する必要がある。

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