車椅子の不適切な取り扱いが当局に問題視された米アメリカン航空=ロイター

【ニューヨーク=西邨紘子】米運輸省(DOT)は23日、不適切な障害者対応を巡り、アメリカン航空に罰金5000万ドル(約76億円)を科すと発表した。同社が長年にわたり、車椅子利用者に必要なサポートを怠ったほか、利用客の車椅子「数千台」を不適切な取り扱いで傷つけたり、返却を遅らせたりしたことを理由とした。障害者保護を巡る航空会社への罰金では過去最高額という。

米当局は、航空会社に障害のある乗客の空港内の移動や乗り降りに適切な補助を提供することや、車椅子を「受け取った状態で返却する」ことを義務付けている。

DOTが2019年から23年までのアメリカン航空の車椅子の取り扱いなどについて調査したところ「かなりの数の違反が見つかった」(DOT)。

事例の1つとなった動画には、マイアミ国際空港で作業員がアメリカン航空の貨物室から出した車椅子を手荷物を運ぶスロープに滑り落とし、勢いづいた車椅子が地面に強くぶつかり、跳ね返る様子が記録されていた。

DOTは車椅子の不適切な取り扱いや車椅子利用者への不十分な補助への苦情はアメリカン航空のほかにも多く、他の航空会社も調査を進めているとした。

アメリカン航空は「車椅子などの不適切な取り扱いに関し、苦情件数と発生率ともに米航空会社中で最悪だった」(DOT)。今回の罰金は障害者保護違反への対応の「新たな前例となる」と航空業界に警告した。

アメリカン航空に課す罰金のうち半額(2500万ドル)は米財務省へ支払い、残る半額は国側が一旦預かり、被害を受けた乗客への補償や車椅子の取り扱いを改善するシステム投資に応じて返金する。必要な支出を行わなかった場合は罰金として徴収する。

アメリカン航空は23日発表した声明で、過去数年で車椅子の取り扱いを改善する機械やシステムへの投資、従業員のトレーニングを増やしてきたと説明した。その成果で車椅子などの取り扱いの苦情が「過去2年で20%減少した」としている。

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