23日、BRICS加盟国の首脳は全体会合で共同宣言を採択した=BRICSロシア2024提供・ロイター

ロシアや中国など有力新興国で構成するBRICSの首脳会議は23日、加盟国が参加する全体会合を開き共同宣言を採択した。ウクライナ侵略を続けるロシアへの西側諸国の制裁などを念頭に、一方的な措置への懸念を表明した。中国やロシアが主導するBRICSの欧米諸国への対抗軸形成に向けた思惑がにじんだ宣言となった。

採択した「カザン宣言」では、「違法な制裁を含む非合法な一方的強制措置が、世界経済や国際貿易に及ぼす悪影響を深く懸念する」と明記した。BRICSの枠組みにおける金融協力についても、加盟国間の決済における自国通貨の使用拡大を引き続き検討するとした。

ウクライナ侵略、「平和的解決に向けた仲介」を評価

ロシアによる2022年2月のウクライナ侵略開始後、欧米は国際送金システムである国際銀行間通信協会(Swift)からロシアを締め出すなど金融・経済制裁を相次いで科した。

ロシアは輸出の柱である石油やガスについて、従来の輸出先だった欧州連合(EU)などから中国やインドなどに見直しを進めた。侵略の長期化にともなって、アジアへの輸出シフトがロシアの戦費調達を支える構図になっている。

米国のバイデン大統領は23年12月、ロシアの制裁逃れに加担している第三国の金融機関を二次制裁する方針を表明した。制裁の強化で米国による制裁を懸念する中国や中央アジア諸国、トルコなどの金融機関がロシアとの取引を見直した。ロシアメディアによると、ロシアの銀行から中国などの銀行に送金できないほか、時間がかかる事例が相次いでいる。

共同宣言ではロシアが継続するウクライナ侵略について「対話と外交を通じて紛争の平和的解決を確保するための仲介」について評価するとした。イスラエルの軍事作戦に伴うパレスチナ自治区ガザの人道状況に危機感を表明した。

中国とブラジルが5月にウクライナ侵略の政治的解決を図る和平案を発表するなど、BRICS加盟国内では侵略行為が長期化するロシアとウクライナの間の仲介役をかってでる動きがでている。だが、ウクライナのゼレンスキー大統領は9月に「(ロシアの)プーチン(大統領)に戦争を継続させる政治的余地を与える」として和平案を受け入れない考えを示しており、停戦交渉に向けたハードルは高い。

23日の全体会合ではBRICSの拡大に向け、「パートナー国」制度の創設について支持すると明記した。ウシャコフ大統領補佐官は同日、パートナー国に加わる13カ国のリストを調整済みだとロシアメディアに述べた。

同日は具体的なパートナー国名は公表されなかった。今後各国が承認した時点で発表するとみられる。

拡大するBRICS、異なる思惑も

24年1月にBRICSにはイランやエジプトなど4カ国が加盟し、従来の5カ国から9カ国に加盟国は増えた。新設されたパートナー国の位置づけについては不透明な部分が多いものの、パートナー国が確定すればBRICSは参加国数が大きく拡大することになる。

ロシアや中国が主導するかたちでBRICSの急拡大をけん引する一方で、インドやブラジルはかねてBRICSの拡大に慎重な姿勢を示してきた。24年に加盟を申請・希望したタイやトルコは貿易の拡大など経済的な実利を狙う。各国の思惑には温度差が目立っている。

ロシア西部カザンで22日に始まったBRICS首脳会議は24日が最終日となる。同日は招待国を含めた拡大会合を開催、BRICSとグローバルサウス(新興・途上国)をテーマに協議する予定で、中東情勢などについて改めて議論するとみられる。全日程の終了後にプーチン氏が記者会見を開く予定だ。

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