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ストライキに加わる組合員 アルバイトをする人も
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部品供給メーカーの経営にも大きな影響
ボーイングが23日に発表したことし7月から先月までの3か月間の決算で、最終的な損益は61億7400万ドル、日本円でおよそ9400億円の赤字となりました。
コロナ禍で航空需要が大幅に落ち込んだ2020年10月から12月期以降で最大の赤字額です。
最終赤字となるのは9四半期連続です。
これは、開発中の次世代の大型機、777Xの納入延期などによって多額の損失を計上したことに加え、先月中旬からの労働組合のストライキによって生産や納入に影響が出ていることなどが主な要因です。
ボーイングでは賃上げなどを巡る労使交渉がこじれて先月13日から3万3000人が加入する労働組合が16年ぶりにストライキに突入しました。
会社では賃上げの幅を4年間で35%にすることなどを柱とした新たな提案を示していて、23日に行われる組合員を対象にした投票の結果が日本時間の24日午前にも明らかになる見通しです。
ストライキに加わる組合員 アルバイトをする人も
ストライキに加わる組合員の中には、減少した収入を補うため、飲食店やスーパーなどでアルバイトをする人もいます。
ボーイングの労働組合はストライキの期間中、組合員に対して1週間あたり250ドル、日本円でおよそ3万8000円を生活支援金として支給しています。
ただ、それだけでは生活を維持することが難しいため、アルバイトなどを始めた人も多いということです。
シアトル郊外の工場で部品の運搬を担当しているチャズ・バーンファーザーさん(33)はストライキが始まった直後からかつて勤めていた地元のレストランで再び働き始めました。
看護師として働く婚約者と暮らしていますが、収入が減少する中、週に5日ほどアルバイトをして家賃や生活費の支払いに充てているということです。
バーンファーザーさんは、「ストライキは100%支持する。従業員に適切に給与が支払われれば『今月の家賃を支払えるか』と心配しなくていいし、幸せな生活を維持できる」と述べました。
また、会社側から示された新たな提案については「4年間で35%の賃上げについてはよいと思うが、会社にはまだ譲歩できることがあるはずだ」と述べた上で、年金制度なども踏まえて最終的に賛成するかどうかを決めたいとしています。
部品供給メーカーの経営にも大きな影響
ボーイングの労働組合によるストライキは部品を供給するメーカーの経営にも大きな影響を与えています。
シアトル郊外にある航空部品メーカーでは、ボーイングの777型機など主力の航空機の部品およそ1200種類を取り扱っています。会社によりますと、ボーイングとの取り引きが全体のおよそ95%を占めていますが、9月、ストライキが始まってから売り上げが大きく減少しているということです。
このため、従業員およそ70人のうち半数程度については出勤を一時的に取りやめる対応などを続けているということです。
「パスファインダー・マニュファクチャリング」のデビッド・トレーダーCEOは、「よいニュースが届くと期待して通常の生産体制に戻れるようにしている。もしストライキが続いた場合、会社が生き残るためにはコストを削減する必要があり、私にとっては難しい決断になる」と述べ、従業員の削減などを検討せざるを得ないという考えを示しました。
会社では、組合員による投票の結果、ストライキが終わったとしてもボーイングが従来のような経営状況に戻るには時間がかかるとみていて、トレーダー氏は「長期戦に備えて自動車業界などにも取引先の開拓を進め、成長を続けていきたい」と話しています。
専門家に聞く ストライキの背景や長期化した場合の影響は
航空関連のコンサルティング会社、「エアロダイナミック・アドバイザリー」のリチャード・アブラフィアマネージングディレクターは、ストライキが続く背景について「アメリカの航空や宇宙などの分野では人手不足が深刻で、今は数十年ぶりに労働者が力を持っている状況だ」と指摘しました。
そのうえで、会社側の提案が投票で否決され、ストライキが長期化した場合の影響については「ジェット機などの背後には複雑なサプライチェーンがあり日本企業は最大の取引先の1つだ。アメリカでも収益の半分以上をボーイング関連で占めている企業があり、ストライキがさらに長引いて生産や出荷が滞れば、サプライチェーンに障害が発生しうるという大きな懸念がある」と述べました。
一方、会社の経営のあり方については、株主への還元を過度に重視する一方で従業員への要求を増やし、福利厚生を軽視してきたという厳しい見方を示したうえで、「株主への還元だけに関心がある会社ではなく、真の製造業に戻るために経営していく必要がある。そのためには経営陣が取引先や従業員に対し、かつての地位を取り戻すために新しい製品やテクノロジーを生み出していくことを伝えるべきだ」と述べ、これまでの方針を大きく見直す必要があるという考えを示しました。
日本企業への影響は
日本企業は1980年代以降、民間航空機の分野でボーイングとの関係を深め、主翼の製造などを担ってきました。
ボーイングによりますと、現在、日本のパートナー企業の数は150社にのぼり、アメリカを除くと、日本が部品などの調達で最大の供給国になっています。
今回のストライキでは、日本企業が生産に関わっている機体のうち、主力の787型機については生産への影響が出ていないため、各社ともストライキの影響は限定的だとしています。
一方で、日本企業が生産の21%を担っている大型の777型機や小型の737MAXでは生産スケジュールに影響が出ているということです。
777型機では中央翼を担当するSUBARUや、機体の前部と中央の胴体を担当する川崎重工業が生産スケジュールを先延ばししているということです。
さらに737MAXでも三菱重工業が主翼の一部のパーツをベトナムで生産していますが、ストライキに伴い生産スケジュールを先延ばししているということです。
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