新興国で作るBRICSの首脳会議は、ロシア中部タタルスタン共和国の中心都市カザンで22日から24日まで開かれ、日本時間の23日未明、始まる予定です。
22日、会議が開かれるカザンの空港には、各国の首脳が続々と到着し、「チャクチャク」と呼ばれる地元の伝統的なお菓子や、客にパンと塩をふるまうロシア式の方法で出迎えを受けていました。
今回の首脳会議は、エジプトやイランなど新たに4か国が加わり、加盟国が9か国に拡大してから初めてです。
ロシア大統領府のウシャコフ補佐官は21日、首脳会議と拡大会合にあわせて36か国が参加し、このうち22か国は首脳級が出席すると発表しました。
ロシアがこれだけ多くの首脳らを集めて国際会議を開催するのは、2022年ウクライナ侵攻を始めて以降初めてで、会議の開催に合わせてプーチン大統領は、中国の習近平国家主席やインドのモディ首相などと2国間の首脳会談も行います。
ロシアとしては、ウクライナ侵攻で欧米などに制裁を科される中にあっても、国際社会で孤立していないとアピールするとともに、欧米に対抗する狙いがあるものとみられます。
エジプトやイランなど加わり 9か国に拡大したBRICS
BRICSはこれまでブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国でしたが、去年の首脳会議で拡大することが決まり、エジプトやイランなどが加わり、9か国に拡大しました。
世界銀行によりますと、拡大した9か国の人口をあわせるとおよそ35億9000万人で、世界の総人口のおよそ45パーセントに上ります。
また、9か国のGDP=国内総生産の合計は世界のおよそ26パーセントを占めています。
ロシアの専門家「欧米などの制裁 効果なく近視眼的と示すもの」
元外交官で、BRICSを研究しているロシア科学アカデミー経済研究所アジア・ロシア戦略センターのトロラヤ所長が、NHKのインタビューに応じました。
この中で、トロラヤ氏は、ロシアでBRICSの首脳会議が開かれることについて「欧米などから厳しい制裁を科されても、ロシアはこのような行事を開催でき、欧米以外の国々は欧米に脅されてもロシアとの交流を望んでいる。制裁は効果がなく近視眼的だと示すものだ」と指摘しました。
その上で「ロシアにとっては自国の政策や外交的な立場について一定の支持を得ることが重要だ」と述べ、ウクライナをめぐって欧米と激しく対立するロシアとしては、インドやブラジルなど「グローバル・サウス」と呼ばれる国々からの支持を集めるための外交の場として重視しているとの見方を示しました。
さらに「BRICSの主要な任務は世界秩序を変えることであり、多極化の概念に基づく、より公正な世界秩序への移行を目指すことだ。現在の世界秩序はアメリカを中心とした欧米の支配に基づいているからだ」と述べました。
一方で、G7=主要7か国との関係については「BRICSはG7と均衡を図るものではあるが、対立するものではなく、互恵的な条件においては協力するものだ」と述べ、対立は目指していないと強調しました。
初参加のイラン 各国に懸念を訴える場としたい考え
今回のBRICSの首脳会議には、ことし新たに加盟したイランも参加することになっています。
イラン政府は21日、ペゼシュキアン大統領が首脳会議の期間中、全体会合での演説に加え、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席、それにインドのモディ首相などと個別に会談する予定だと発表しました。
また、国営通信によりますと、アラグチ外相は19日、今回の会議について、イスラエルの攻撃により人道状況が悪化するガザ地区やレバノンをめぐって、各国に懸念を訴える場としたい考えを示したということです。
イランとしては、欧米と一線を画す国々の首脳が集まるこの機会を通じ、みずからの立場への支持を広げるとともに、イランが行ったミサイル攻撃に対して、近く対抗措置に踏み切る構えを見せるイスラエルをけん制するねらいがあるものとみられます。
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