【ニューヨーク=清水石珠実】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)を傘下に持つ経済メディア企業「ダウ・ジョーンズ」が、生成AI(人工知能)を使った検索サービスを手がける米新興パープレキシティを21日に提訴した。同社の記事をパープレキシティが許可なく無料で使用し、著作権を侵害していると指摘した。
ダウ・ジョーンズが21日に提出した訴状には、米大衆紙「ニューヨーク・ポスト」も名を連ねた。ともに米メディア大手ニューズ・コーポレーションを親会社に持つ。
ニューズ社のロバート・トムソン最高経営責任者(CEO)は声明で、「パープレキシティは意図的に知的財産(IP)を乱用し、ライターやジャーナリスト、そしてニューズ社に損害を与えている」と非難した。
訴状によると、今年7月、ニューズ社側はパープレキシティに対して、記事の無断使用を停止し、ライセンス契約に向けた話し合いを持つように打診する書簡を送った。だが、パープレキシティ側からの返信はなかったという。
ニューズ社は訴状のなかで「パープレキシティの行為は、報道機関が制作した貴重なコンテンツにタダ乗りするものだ」と激しく批判した。同社は、裁判所がパープレキシティに対して、著作権で保護されたコンテンツの無断使用を禁止し、違法に得た情報を含むデータベースの破棄を命令することを求めている。全体での損害賠償額は示していないが、損害は著作権侵害1件あたり最大で15万ドル(約2260万円)に相当するという。
パープレキシティの記事使用に懸念を示している報道機関はニューズ社だけではない。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)も10月上旬に、同社に対して記事の無断使用をやめるように求める書簡を送っている。
パープレキシティは、米オープンAIの技術者だったアラビンド・スリニバスCEOらが2022年に設立した。WSJは20日、同社が企業価値を80億ドル以上と見積もり、約5億ドルの資金調達を目指すと投資家に伝えたと報じた。米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏なども出資する話題の生成AI企業だが、訴訟沙汰が続くとこうした資金調達計画に影響が出る可能性がある。
対パープレキシティでは訴訟に踏み切ったニューズだが、今年5月、生成AIブームの代表格であるオープンAIとはライセンス契約を結んでいる。記事データを使ったAI学習や要約の作成を認める代わりに対価を受け取る内容だ。一方で、NYTは23年12月にオープンAIと同社に出資する米マイクロソフトを著作権侵害の疑いで訴えている。
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