目次
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Q.北朝鮮は「参戦」を決断したのか
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Q.北朝鮮にとって「参戦」のメリットは
Q.北朝鮮は「参戦」を決断したのか
(南山大学 平岩俊司教授)
A.
ロシアと北朝鮮は、ことし6月、有事の際に軍事的な援助の提供を盛り込んだ新しい条約を締結しましたが、正規軍による正式な「参戦」は北朝鮮にとって大きな決断となります。
仮に北朝鮮が「参戦」した場合、国際社会で非難を受けているロシアへの支持をこえて、ロシアと一蓮托生(いちれんたくしょう)となり、国際社会から批判を受け、さらなる制裁を加えられることにもなりえます。
北朝鮮にとって「大きな負担」になると思います。
Q.北朝鮮にとっての「大きな負担」とは
A.
北朝鮮は、NATO=北大西洋条約機構の加盟国のうちイギリスやドイツなどと国交を結んでいて、これらの国々を敵に回し、事実上の敵対的な関係になります。
外交関係を再調整する必要が生じ、外交面を含めてかなり負担が大きくなることは間違いありません。
こうした中で私はいまのところ「参戦」ではなく、正式ではない別の形での協力にとどまっていると判断しています。
北朝鮮やロシア側の正式な発表なども見極めて、実際に「参戦」したのか判断していく必要があります。
Q.北朝鮮にとって「参戦」のメリットは
A.
まず経済的な見返りがあると思います。
エネルギーや食料、場合によっては現金が入る可能性もあります。
軍事面では、北朝鮮の弾道ミサイルなどの兵器が使われたときの実戦でのデータが得られ練度の向上なども図られます。
ロシアは兵士不足とされていて、北朝鮮側からすれば、ロシア側の要請にできる範囲で応えていくということだと思います。
Q.北朝鮮はなぜロシアに接近するのか
A.
北朝鮮はいま、「国防5か年計画」を達成するためにさまざまな兵器の実験などをしています。
例えば、軍事偵察衛星をことし3基打ち上げると宣言したほか、原子力潜水艦の技術も課題とされ、これらの技術協力を期待していると言えます。
北朝鮮にとって中国はなかなか技術協力をしてくれませんが、ロシアは新しいパートナーです。
ただ、北朝鮮は、ウクライナ情勢が変われば、ロシアが自分たちを必要とする度合いも変わってくることをよくわかっているため、ロシアが北朝鮮にすり寄っている間にできるだけロシアから多くを得たいのです。
Q.「参戦」した場合、朝鮮半島情勢にどのような影響を与えるか
A.
仮に正式に「参戦」した場合はことし6月に締結した新しい条約に基づく「参戦」となるため、朝鮮半島で有事が起きた場合、ロシアが同等な形で朝鮮半島の紛争に参戦する可能性が出てきたということになるとも言えます。
そのためロシアや北朝鮮が本当に決断をしたのか疑問もありますが、こうした可能性や危険性を懸念しなければなりません。
Q.
北朝鮮はロシアとは軍事協力を進め、韓国に対しては南北の道路を爆破するなど強硬な姿勢を示しています。
A.
韓国は北朝鮮に対して一歩も譲るつもりはなく、北朝鮮も攻撃的な姿勢を改めませんので、南北関係は緊張の一途をたどらざるを得ないでしょう。
今後、緊張が高まると南北の間で偶発的で小規模な戦闘の可能性も否定はできませんので、配慮が必要になります。
ロシアと北朝鮮の関係が強化されていくことは、北朝鮮が主張する、日米韓3か国と中ロ朝が対立するいわゆる「新冷戦」のような対立構造が東アジアでできあがることにもなりうるので、われわれとしては警戒をしていくことが必要です。
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