目次

  • Q1 被団協のどんな点が評価されたとみられるか

  • Q2 受賞の背景には何があるのか

Q1 被団協のどんな点が評価されたとみられるか

A1
核兵器廃絶を願う被爆者の声を、唯一の戦争被爆国・日本から世界に発信し続けてきた、その地道な活動が評価されたのではないか。

これまで国連の軍縮特別総会での被爆者の演説、世界各地で開いてきた原爆の写真展などを通じて、原爆被害の実相を伝えてきた。

いまや「ヒバクシャ」は世界に通じることばとなっている。

さらに被団協の活動は国際的な枠組みにも影響をもたらしていて、核兵器の開発や保有などを禁止する「核兵器禁止条約」をめぐっては、すべての国の参加を求める1370万人分あまりの「ヒバクシャ国際署名」を集め、2021年1月の発効につなげた。

Q2 受賞の背景には何があるのか

A2
核兵器が実際に使われる懸念が、かつて無いほど高まっていることも背景にあるのではないか。

ウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったロシアのプーチン大統領は、核兵器による威嚇を続け、また核開発を進めている北朝鮮は、ミサイルの発射を繰り返している。

ロシアが核兵器を使用する可能性を示唆する中で、一部の国の間では、核抑止力への依存を強めようとする動きも出るなど、核兵器に対する各国の見方が分かれる中、核軍縮に向けた機運を高めていきたいというメッセージが込められているのではないか。

Q3 では今回の被団協の受賞で核廃絶への動きはどうなる

A3
核廃絶に向けた見通しは、現状では厳しいと言わざるを得ない。

核保有国を含め、国連加盟国のほとんどにあたる191の国と地域が参加するNPT=核拡散防止条約の再検討会議が、おととし、ニューヨークで開かれ、世界の核軍縮に向けた道筋を示せるか注目されたが、ロシアによる反対で最終文書を採択できなかった。

一方で、2021年に発効した「核兵器禁止条約」は、核兵器の開発や保有、使用などを禁止する国際条約で、これまでに73の国と地域が批准しているが、アメリカやロシア、中国などの核保有国や、アメリカの核の傘のもとにある日本などは条約に参加しておらず、核保有国と非保有国の溝は埋まっていない。

さらに世界の核弾頭の9割を保有するアメリカとロシアの間では、去年2月にロシアがアメリカとの核軍縮条約「新START」の履行停止を一方的に表明し、これに対してアメリカは戦略核兵器についての情報提供を停止すると明らかにしている。

各地での緊張を受け、各国が長年知恵を寄せ合ってきた核軍縮の取り組みが行き詰まりを見せているのが現状。

Q4 唯一の戦争被爆国として日本に求められる役割は大きいのでは

A4
唯一の戦争被爆国である日本は、核廃絶を悲願として掲げる一方で、安全保障政策ではアメリカの「核の傘」に頼るというジレンマを抱えてきた。

そうしたジレンマを抱える日本政府に対し、核兵器がもたらす悲劇を諦めずに訴え続けてきたのが日本被団協や被爆者たちだと言える。

しかし、被爆者の平均年齢は、ことし3月末の時点で85.58歳と高齢化が進み、かつてはすべての都道府県にあった被爆者団体もこれまでに11の団体が解散したり活動を休止したりしている。

世界で核の脅威が高まるなか、核には核で応じるしかないという発想を転換し核の脅威を減らす方向に世界を導くことができるのか、日本政府に求められる役割も大きいと感じる。

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