【ニューヨーク=佐藤璃子】国連のグテレス事務総長は26日、核兵器がない世界を目指すための高官級会合で演説した。「核兵器の脅威がこれほど暗い影を落としているのは、冷戦期の最も緊迫した時期以来だ」との危機感を示した。地政学リスクが高まるなか、米国やロシアなど核保有国に対し軍縮を進めるよう改めて求めた。
同会合は国連が9月26日と定めた「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」の記念イベント。グテレス氏は「10年前と比べ核廃絶に近づくどころか、完全に間違った方向に進んでいる」と指摘。「核廃絶が実現するまで、保有国はいかなる状況においても核兵器を使用しないことを誓うべきだ」と訴えた。
核兵器の使用を巡り、大国間で緊張が高まっている。ロシアのプーチン大統領は25日、核兵器を使用するための条件を示した「核抑止力の国家政策指針」を改定すると述べた。核兵器を保有していない国からの攻撃であっても核保有国の支援があれば共同攻撃とみなすとも言及し、核兵器使用の可能性を改めて示唆した。
同日に中国の人民解放軍は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋の公海に向けて発射した。安全保障協力を強める米英豪をけん制する狙いが指摘される。
地政学リスクの高まりが核兵器の脅威を増幅させているとの見方は少なくない。22〜23日に国連で開催された未来サミットでは、核兵器の完全廃絶という目標に向けて再び取り組むことなどを盛り込んだ成果文書「未来のための協定」が採択された。
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