イスラエル軍は24日未明からレバノン南部でヒズボラのロケット弾の発射台などへの空爆を続けているほか、国境地帯ではレバノン南部の村に向けて戦車による砲撃を行ったと発表しました。

詳しい被害状況は分かっていません。

23日のイスラエル軍の空爆による死者は、レバノン保健省によりますと女性94人、子ども50人を含むあわせて558人にのぼっています。

多数の死者が出た原因についてイスラエル軍の報道官は23日夜、記者会見しイスラエル軍の空爆でヒズボラが民家に隠したミサイルやロケット弾が誘爆を起こしたためだとして「責任はヒズボラにある」と主張しました。

イスラエル軍は23日の空爆を前に住民に対し、ヒズボラが兵器を隠した民家などから避難するよう呼びかけていました。

一方、ヒズボラも24日未明からイスラエル北部にある軍用空港や爆薬の製造工場など合わせて4か所にロケット弾による攻撃を行ったと発表しました。

イスラエルメディアによりますと、合わせて90発が発射されイスラエル軍は大部分は撃ち落としたとしていますが、ロケット弾の破片で女性1人がけがをしたと伝えられていて双方の間で攻撃の応酬が続いています。

レバノン 大きな荷物抱え避難「とても悲惨な状況」

イスラエル軍の大規模な空爆を受けて、レバノン政府はロイター通信の取材に対し、学校など89か所を一時避難所として開放し、2万6000人以上の受け入れを可能にしたとしています。

南部の都市シドンで撮影された映像では、イスラエル軍の空爆から逃れようと、多くの家族連れなどが大きな荷物を抱えて学校に避難しています。

また、避難する住民の車で道路が渋滞していて、トラックの荷台に多くの人が乗り合い移動しています。

避難してきた男性は「空爆が激しくなり、子どもたちが怖がるようになったので、離れることにしました」と話していました。

別の女性は「私たちの家のすぐそばで空爆があり、建物が揺れました。大きなストレスを感じ、ここに来ました。とても悲惨な状況です」と話していました。

イスラエルとヒズボラの対立

去年10月、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が始まった日の翌日、ハマスと連帯するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラはイスラエル北部を砲撃し、以来、双方の間で散発的な戦闘が続いていました。

この影響でイスラエル北部のレバノンとの国境地帯の住民は避難生活を余儀なくされ、その数は現在も6万人以上にのぼります。

双方の衝突が徐々に激しくなるなか、ネタニヤフ政権は今月17日、避難生活を送る住民を安全に帰還させるとしてヒズボラへの対応を軍事作戦の目標に加えることを閣議決定します。

17日と18日にはレバノン各地でヒズボラの関係者が使っていたポケットベルやトランシーバーが一斉に爆発し、合わせて30人以上が死亡し、3000人以上がけがをしました。

イスラエル側は爆発への関与などについて沈黙を保っていますが、ヒズボラはイスラエルによる犯行だとして報復を宣言します。

イスラエル軍はレバノンとの国境地帯に部隊を増強し、20日、レバノンの首都ベイルート郊外を空爆し、ヒズボラの幹部らを殺害したのに対し、ヒズボラはイスラエル北部のハイファ近郊に射程の長いロケット弾などを発射し、イスラエルメディアによりますと5人がけがをしました。

そしてイスラエル軍は23日、レバノン南部などで民家に隠してあるヒズボラのミサイルやロケット弾を破壊するとしておよそ1600か所で空爆を行いました。

この空爆で女性と子ども93人を含む492人が死亡。

2006年に双方の間で起きた大規模な戦闘以降、レバノン側では1日で最も多くの死者が出ています。

レバノンとは

レバノンは地中海に面した人口およそ530万人の岐阜県ほどの大きさの国で、南はイスラエルと国境を接しています。

キリスト教やイスラム教など18の異なる宗教や宗派の人々が住んでいることから「モザイク国家」とも呼ばれています。

キリスト教徒とイスラム教徒の衝突をきっかけに1975年から15年にわたって内戦が続き、そのさなかの1982年にはイスラエル軍がレバノンに侵攻しました。

イスラエル軍に抵抗するため発足したのがイスラム教シーア派組織ヒズボラで、2006年には、ヒズボラがイスラエル兵を連れ去ったことをきっかけにイスラエルとの間でおよそ1か月にわたって大規模な戦闘が続き、レバノン国内のインフラなどに大きな被害が出ました。

レバノン政府は経済の立て直しに取り組みましたが、長年の財政赤字や貿易赤字などの影響で、2020年3月、事実上のデフォルト=債務不履行に陥りました。

その後も2020年8月に首都ベイルートで起きた大規模な爆発で食料の輸入拠点である港が壊滅的な被害を受けるなど、経済危機が深刻化しています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。