米国でプラスチックごみのリサイクルは課題となっている(米西部ユタ州のプラごみ回収施設)=ロイター

【ヒューストン=花房良祐】米西部カリフォルニア州は23日、プラスチックの再利用で世論を欺いたとして、石油メジャーの米エクソンモービルを州裁判所に訴えた。同州によると、エクソンはリサイクルでプラスチックごみの環境問題を解決できると主張したが、実際には大半が経済的・技術的に再資源化できないことを知っていたという。

米メディアによると、米国で石油会社がプラスチックごみの再利用で欺いたとして訴えられるのは初めて。幅広い用途に使われるプラスチックは経済成長に応じて需要が拡大する。訴訟はプラスチックの再利用を巡る議論に一石を投じそうだ。

プラスチックは海や山に廃棄されると分解されずに長く残るため、正しく処理する必要がある。廃プラの細かくなった粒子が魚などを通じて人体に入る健康問題も指摘されている。エクソンはプラスチックごみの再利用を解決策として訴えてきた。

だが、廃棄されたプラスチックを再び製品にするには回収・分別・再生の工程でコストがかかる。リサイクルするより新規生産した方が安い。米国全体でも廃プラのうち約5%しか再資源化されていない。

エクソンは廃プラのリサイクルを手掛けているが、プラスチック製品として再生される比率は極めて低いという。

同州のボンタ司法長官は2年間の調査の結果、エクソンがリサイクルの限界を知りながら世論を誤った方向に誘導したと結論づけた。ボンタ氏は「プラスチックは環境と健康に取り返しのつかない被害を与えている。エクソンは数十年にわたり世論を欺いた」との声明を公表した。

州当局はエクソンに罰金を求め、ボンタ氏は米メディアに「数十億ドル(数千億円)になる」との見方を示した。一方、エクソンは「訴訟は問題の解決につながらない。先進的なリサイクルは真の解決策だ」と反論した。

エクソンの化石燃料から樹脂など化学製品を製造する石油化学事業は石油・天然ガス開発と製油所・小売事業に次ぐ柱だ。州当局によると、エクソンは再利用されないプラスチックの原料となる樹脂の世界最大の生産企業。

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