米東部ペンシルベニア州スリーマイル島原子力発電所は再稼働する方針だ(2017年)=AP

【ヒューストン=花房良祐】米大手電力コンステレーション・エナジーは20日、東部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所1号機を再稼働させると発表した。米IT(情報技術)大手マイクロソフトの人工知能(AI)で使用するデータセンターに20年間にわたり電力を供給する。米国ではデータセンターの電力消費が急増し、温暖化ガスを排出しない原発の見直しが進んでいる。

米国で最悪の原発事故 28年までに再稼働

スリーマイル島原発2号機では1979年に事故が発生した。炉心溶融(メルトダウン)が発生し、米国で原発の新規建設が数十年にわたり停滞した原因となった。原発の深刻な事故はスリーマイル島、ソ連のチェルノブイリ(現ウクライナ)、福島第一原発で起こっている。

事故を免れた1号機は運転を続けたが、再生可能エネルギーとガス火力発電の台頭を受けて競争力が低下。運転期間の許認可は34年までだったが、それを待たずに19年に廃炉とした。再稼働するのは1号機で、事故機の2号機は対象外だ。

コンステレーションは約16億ドル(約2300億円)を投じて安全対策を進め、原子力規制当局の許認可を経て2028年までに再稼働させる。加えて、54年までの運転の許認可も求める。再稼働のための公的支援額の見通しは明らかにしていない。

米国ではAIの普及でデータセンターの電力需要が急増しており、マイクロソフトは25年までデータセンターなどの消費電力の排出ゼロを目指している。温暖化ガスを排出しない基幹電源(ベースロード)として原発の電力の調達を増やす。

テック大手が相次ぎ原発活用、データセンター向け

民間企業1社が大型炉1機分の電力をまるごと買い取る契約は珍しい。1号機の出力は83万5000キロワット。

米国のIT大手はこれまで再生エネで排出削減を目指してきたが、最近は原発活用にかじを切っている。アマゾン・ドット・コムも3月、ペンシルベニア州のデータセンターを購入して近くの原発から電力供給を受けることで合意した。

省エネの普及で米国の電力需要は微増にとどまってきたが、データセンターの急増で先行きは大幅に増加するとの見通しが23年ごろから台頭した。28年まで大型原発38機分に相当する3800万キロワット分の追加需要が発生するとの予想もある。再生エネだけでは賄えず、排出削減に向けた課題だ。

一方、米国で原発の競争力は低下している。

各地で原発再稼働を検討

過去10年超にわたり米国の発電設備の新規導入は再生可能エネルギーと天然ガス火力が大半を占めてきた。再生エネは政府が手厚く支援し、日照条件が良好な西・南部で太陽光発電、風が強い中西部で風力発電の開発が盛んだ。

2000年代後半から「シェール革命」が始まり、世界最大の天然ガス生産国となった米国では発電燃料が安くなったことでガス火力発電の競争力が高まった。

原発は押され気味で、運転許期限の到来前に廃炉する原発が相次いだうえ、新規建設もほとんどない。米国政府は政策支援が必要と判断し、既存原発の延命に補助金を投入しているほか、新規建設コストの安い小型炉の開発を支援している。

廃炉した原発を復活させる動きはこのほかにもある。中西部ミシガン州では計18億ドルの公的支援を受けて25年に再稼働させる方針だ。同イリノイ州の廃炉した原発も再稼働を検討している。

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